三部作番外編

□オムライス
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ちょっと古びた感じのキッチンに時雨は立っていた。
「ねぇ、時雨これからなにするつもり?」
キッチンのカウンターの上に並べられた材料を見て少年が聞く。
「何って“cooking”だよ」
時雨と呼ばれた少し幼い少女が言う。
「時雨に料理なんて出来るの?」
少年が怪訝そうに聞く。
「失礼だね。虚玖は。僕だってcookingくらいできるよ・・・多分」
少し不満そうな口調で時雨が言う。
「虚玖。その姿だと邪魔。元に戻って・・・」
料理を始めようとして虚玖がまだ人型である事に気づき冷たくそう言う。
時雨が言った次の瞬間に少年は黒蝶へと姿を変え近くの椅子へと止まる。
「ねぇ、そういえば時雨何作るの?」
「えっと何て名前だっかな・・・確かおむらいす・・・だったと思う」
虚玖の質問に答えると小さなナイフで玉ネギや肉を切り始める。
彼女が使っているのは漆が塗られているように黒いナイフだ。
柄も刃先も漆黒のナイフ。
「ねぇ、時雨。ソレってもしかしてデッドナイフ?」
虚玖が時雨の使ってるナイフを見て聞く。
「もしかしなくてもそうだよ。魔界から持って来た」
虚玖の問いにそうこともなげに答え料理を続ける。
「それで料理して大丈夫なの?」
虚玖が心配そうに聞く。
「多分大丈夫じゃない?死んでるものと植物には効力ないし」
そう言いながら肉(明らかに鳥1羽分と思われる)を適当な大きさ(大きいのや小さいのがある)に切り分けていく。
「何でホウチョウとかいうの使わなかったの?」
肉を切るのを止め玉ネギを切り始めた時雨に聞く。
「なんとなく使いたくなかっただけ」
皮付きのままの玉ネギを切りながら時雨が答える。
「ふ〜ん。それで作り方分ってるの」
「知るわけないでしょ?」
虚玖の問いに答えながら適当に切った鳥肉と玉ネギをフライパンに入れていく。
切った食材を全てフライパンの中に入れてコンロの上に置く。
「知らないでどうやって作るつもり?」
虚玖がそう言ったのと時雨が魔法でコンロに強制的に火を点けたのは同時だった。
「知らなくてもなんとかなるって」
そういいながらフライパンの中身を炒める。
炒めた食材にチューブに入った紅い何かを加えご飯をソコに入れた。
ご飯の方のフライパンの火を切って、ボールに卵を割って解き解す。
もう一つフライパンをコンロに置き火を点けて卵を流す。
卵が固まったら火を止める。
お皿にご飯を盛って卵を上に乗せる。
合計4人分のオムライスが完成した。
「出来た!」
嬉しそうにお皿に乗ったオムライスを見る。
「ねぇ、時雨。それ食べれるの?」
虚玖が訝しげに聞く。
「多分ね。刹那の魔薬よりはましだと思うけど・・・」
そう言いながらお皿をお盆に載せる。
「時雨。もしかして刹那だけじゃなくてあの死神達にも食べさせるつもり」
「もしかしなくてもそうだよ。あの2人にも食べてもらうよ」
にっこりと微笑んで言うとそれを何処かへと運んでいった。

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