運命の扉

□第1話
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電車の中のような規則的な振動で少年は目覚めた。
目を開けると其処は乗った覚えの無い列車の中だった。
自分の目の前の席には綺麗な少女。
「うん、そーだよ明後日には着くと思う」
少女は携帯電話で誰かと話している。
「分かんないよ。そんなの。―が遅れるのは何時もの事だし・・・。」
少女は少し呆れ気味に電話越しの誰かに話す。
「うん、うん。そーゆこと。ねぇそういえばキルア元気?僕一人でこっち来ちゃったじゃん。拗ねてたり泣いたりしてない?
・・・・・・うん。そっか〜強くなったんだね。それとも翔冴が居たからかな?」
少女が可笑しそうに笑って言う。
「うん、うん。それ聞いて安心した。じゃあね刹那、また電話する。うん、うん。多分明後日着く…っと思う。うん。じゃあまたね」
少女はそう言って電話を切る。
「・・・此処何処だかわかります?」
少年が少女に問う。
「この列車は『地獄列車』とか『運命列車』って呼ばれてるの。ところで君は知らないで乗ったの?それとも知らない間に乗ってたとか?」
少女がクスクス笑って言う。
「気付いたら・・・此処に居た」
少年が言う。
「へぇ〜“運命買われた”んだ君。名前は?」
少女は1人納得して少年に名を聞く。
「・・・透夜。朱翅透夜(あけばね とうや)」
少年―透夜がそう名乗る。
「トウヤ・・・。へぇ〜君がそうなんだ。私は葵時雨。よろしくね」
時雨がニッコリ笑って言う。
「さっき葵さんが言ってた運命買われたってどういう意味?」
透夜が時雨に聞く。
「私の事は時雨って呼んで。それは・・・“運命買い”って私達は呼んでるんだけどね。簡単に言うと人の運命を買うの、『対価』を払ってね」
時雨が言う。
「それって人身売買!?」
透夜が驚いたように言う。
「あはは。違うよ〜。そんな物騒な事じゃないよ。」
そう笑って時雨が言う。
「でも、人身売買より辛い事かも知れないけど…」
そうトーンを落として言う。
「え?それはどういう…」
透夜が怪訝そうな顔で言う。
「運命を買われた者はもはもう元には戻れない」
時雨が静かに言う。
「え?」
「元居た所、過ごした環境、家族、知り合い・・・。運命を買われた者に関わった物達の記憶は消えるの。買われた者に関する記憶、記録は無くなるの」
時雨が言う。
「ソレって・・・」
「居なかったのと同じになる」
そうさらりと時雨言う。
「そんな・・・」
透夜が絶句する。
「大丈夫だよ。きっと君はみんな忘れちゃうんだか」
「忘れる…?何で?」
「運命を買われた者はほとんど買った者に記憶いじられるからね。自分と出会う前の事を全てを忘れさせて其処に偽りの記憶を入れる。つまり運命を買った人のことをずっと前から知ってると思わせられる」
時雨がそう説明する。
透夜は無言で時雨の言葉の聞いていた。
「僕はこれから如何すれば・・・」
透夜が時雨に聞く。
「運命を買った者がこの列車の何処かに居るはずだからその人をタイムリミットまでに探す」
「その人をどうやって探せば・・・」
「透夜が持ってる切符に名前と時間書いてあるはずだよ」
「僕が持ってる?」
時雨の言葉に透夜が不思議そうに呟く。
「ズボンの右ポケットの中にある」
時雨がそう静かに言う。
「え?」
突然の時雨の言葉に透夜が時雨を見る。
「切符、ズボンの右ポケットの中にあるよ。見てみなよ」
時雨がもう1度言う。
透夜が時雨に言われた通りにズボンの右ポケットの中を探すと手に何かの角が当たる。
ポケットから出すとそれは切符だった。
「え?どうして?」
透夜が驚いたように切符を見つめている。
「どうして私が“知ってた”か知りたい?」
クスっと笑って時雨が聞く。
時雨の言葉に透夜が頷く。
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