小説

□龍:
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 異質な暁をクラスメイトは受け入れなかった。
 その珍しさからチラチラと暁へ視線は向けるも、誰も話かけようとはしなかった。暁が訳有りなのは誰の目にも明らかなので、皆どうしていいかわからず、目線で暁に牽制をするしかなかった。
 皆に気を遣わせないように暁がその視線に気づかないフリをして、次の授業の用意を机から取り出していると暁に向けて声がした。

 「おい、オカマ」

 つい。
 つい、だ。
 つい、暁は声がした方に顔を向けてしまった。しかしそれは暁をバカにしたものだと気づくと暁は視線を自分の机に戻した。

 「自覚はあんのか、オカマ野郎」

 声の主は暁の机を隔てて正面に立った。彼は小柄で明るく、現在クラスで一番目立っていて、そしてクラスで一番発言力がある人物だった。

 「無視すんなや」

 無視ではない。
 暁はどうしたらこの場を穏便に回避できるかを考えていて、喋ることまで気が回らなかった。

 「おい!!」
 「っ?!何何?」

 やっと暁は返事を返さなくてはならないと気づいた。

 「お前見たさによく上級生が見にきてるんだけど、正直みんな迷惑してんだよ」
 「あー……」
 上級生が廊下から暁の教室を覗いていることは暁も知っている。
 確かに2つも年上の人間が近くをうろついているのは入学したてのクラスメイト達にとってストレスだろうと理解した。
 暁には少しずつ視線への耐性ができ始めていて、クラスメイトが迷惑していることは今言われて初めて知った。それに対して申し訳ない気持ちがあり、暁は弾かれたように席を立った。

 「気づけなくてごめん。皆には迷惑かけないようにするから」

 暁はこれ以上問題を起こしてさらに目立ちたくない一心で廊下に出た。廊下にはロビーがある。そして進路の資料がある。それを読むためのベンチがある。
 休み時間にはここにいよう。
 物珍しさで暁を見に来る人間がいなくなる時期までは。
 暁は一旦、トイレに行くことにした。一瞬、男子トイレに入りかけ、暁は慌てて女子トイレに入る。
 男子校故、誰も来るはずもない静かな女子トイレ。暁以外の使用者はいないのでとても綺麗だ。
 とはいえ尿意はなく。暁はとりあえず手を洗って、またあのロビーに戻ろうとした。
 その時、廊下で何人かとすれ違ったが、そのことごとくが暁を横目で見ていた。その目線から逃げるように暁が早足になりかけた時、暁はその中の1人の生徒に目がいった。

 ――あれ?!あの人……

 その生徒が暁には見覚えがあるように思えた。こっそり暁は彼が入っていくクラスが何組かを確認すると、放課後に改めて確認しようと決め、自分のクラスに戻った。
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