オマケ
□歪な心5題
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●1.貴方だけを愛してく
(姉上と貴方だけが)
(俺のちっぽけな世界の色だったのだ)
だから俺にはもう、貴方しか…
(いなくならないでいなくならないで)
‥‥‥‥‥‥
↑均衡は既に崩れていると知っているけれど
●2.それが貴方なら、何でも良かった
恋人でなくても、いいんです
一番近くにいさせて下さい
‥‥‥‥‥‥
↑じゃなきゃ守れない
●3.彼の幼さは狂気に似てる
「好き」
「総悟?」
「好きでさァ」
「おい」
「好きでなんでさァ」
「総悟、ちょっ…」
「近藤さんさえいてくれたら、それでいい…好きなん」「総悟!!」
嗚呼、景色が歪む。
「スマン総悟……」
あと何度繰り返せば伝わる?
謝りながら俺を抱き締める、温かで残酷な貴方に。
‥‥‥‥‥‥
↑泣いていることに気づかぬ程、愛してる
●4.流した涙が、血の海になる
隊士が死ぬ。
近藤さんは静かに泣く。
許せねェ…
あの人の涙の左右を、どこぞの攘夷馬鹿が握っているのかと思うだけで虫酸が走る。
とりあえず。
近藤さんが涙を流す原因を作ったヤローを、斬る。斬る。斬る。
気が付けば。
俺の後ろには、無数の屍。
‥‥‥‥‥‥
↑誰よりも鬼と呼ばれたがっているのかも知れない
●5.貴方の声は届かない
四角い木箱。
中には白い花に囲まれた近藤さんが眠っている。
近藤さんの写真の横のあの金一色の造花。
ありゃ何の意味があるんだ?
ただでさえ品がないのに、葬式特有の薄気味わりィ電飾の光を受けて、ああ、一層下品。
空虚なまま呆とその金の花を見て、何かに似ているなぁと思った。
途端。
ひゅるるる どどん
どこからともなく、花火の音。
「聞こえねェ」
「…は?」
「どこぞの祭りの花火が煩くて、近藤さんの声が聞こえねェんでさァ」
「総悟テメー、何言ってやがる?」
「だから、どどんどどん煩くて…」
「こんな寒い時期に、祭りなんざあるわきゃねぇだろ。…俺にゃ、なまくら坊主の有り難くもねえ経しか聞こえねぇ」
……知ってらァ…
この『ひゅるるるどどん』は、俺の記憶の中の…そうだ。
一番幸福だった瞬間の音だ。
姉上と、近藤さんと、幼い俺。
三人で夏祭りに行って。
…近藤さんが何か言ったんだ。
肩に乗せた俺をチラと見て、目の前に咲く夏の大輪を指差して。
笑いながら何かを…
けれど、花が咲き終わった後に追ってくる、あの低く響く音でよく聞こえない。
聞き返すのも面倒。
(だって子供だったんだ)
(打ち上げ花火に夢中になったって、仕方がねェ話さ)
聞こえた振りしてテキトーに頷いたら、近藤さん。
貴方は少し驚いた顔をして、照れたように鼻の頭を掻いて、それから満足そうに笑ったんだ。
近藤さん。
あん時貴方は、何て言っていたんです?
ひゅるるる どどん
聞こえねェ
聞こえねェ聞こえねェ
(記憶の中だけでもいいから)
(貴方の声が聞きたいのに)
けれども、貴方の横で花は品無く輝き続け。
ひゅるるる どどん
ただ、脳内で低く響く。
‥‥‥‥‥‥
↑永遠に答えを失う
◎Thanks◎
お題配布元サイト空をとぶ5つの方法様