ゴリ誕文

□傘の要らない晴天日(神+近)
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●傘の要らない晴天日


近頃の日差しは強い。
ここ数年地球を脅かしているらしい異常は、気象すら数年かけてゆっくりと変化させてしまったようだ。
年々、なかなかに過ごしにくくなっていく。

肌の弱い夜兎族ならば尚更だ。
傘で心許ないときは日除けのために顔を布で覆ったりもするが、しかし神楽はそれが嫌いだった。
異性の家族に、思春期少女特有の嫌悪感を抱いていたからだ。


「あんなヤツらと同じ格好するくらいなら、ずっと押入れから出ない方がマシネ」

「それはいいが…何故にそんな話をわざわざ屯所まで来てするんだ?チャイナ娘」

「お前、太陽みたいネ。日除けマスクも傘もなしでも太陽眺められる機会なんて、私滅多にないアル。だから来るネ悪いかコノヤロー」


日差しの柔らかい太陽を見たいと、押入れで腐っている時に、だって神楽は思ってしまったのだ。
思ったら気持ちばかり急いてしまって、心許ない傘だけを片手に押入れを飛び出してしまったのだ。


「え〜?な、なんか…嬉しいけど恥ずかしいっていうか何て言うか。ていうか、ここ関係者以外立ち入り禁」
「うるさいネ、ゴリ。お前は黙って笑っていればいいアル。黙って笑って私の可愛らしい頭を撫でていればいいアル」


一瞬、間があって。
ハハハッと柔らかな日差しが神楽の頭を撫でた。

その光が愛しくて、神楽はそっと手にしていた傘を置いたのだった。


End.

2010.9.13



    

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