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□春眠
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●春眠

春麗らかとは、今日の様な日の為にある言葉なのだろう。
季節の移り変わり等まるで興味のない沖田すらそう思いたくなる程、春麗らかな午後だった。

陽当たりの良い縁側廊下でぼんやり座っていた沖田は、あまりの陽気の良さについウトウトして目を閉じた。
ふと近くに人の気配を感じたのでうっすら横目で見遣ると、ニコニコ顔をした近藤が座って膝をポンポンと叩き、沖田を見ている。
武州時代によく見ていた光景だった。


「いいんですかィ?近藤さん」

「ははっ!どうぞどうぞ」


沖田は眠気のままモゾと動き、頭を近藤の膝に倒して再び目を瞑った。


「久しぶりですねィ。こうやって近藤さんに膝枕をしてもらうのは」

「そうだなぁ。武州にいた頃はよくこうやって日向ぼっこしてたんだけどなぁ」


少し固めのその枕はけれど何故か心地がよくて、幼い頃の沖田はよく近藤に膝枕をねだっていたのだ。
武州以来の膝枕にあの頃と変わらぬ心地よさを認めて、沖田は何だかくすぐったくなった。


「近藤さんの膝枕が、やっぱ一番気持ちがいいでさァ」

「そーかぁ?俺の膝なんかでよけりゃいつだって貸してやるよ」


総悟はいつまで経っても甘えん坊だなぁ、と近藤が子供扱いするので、沖田は少しムッとした。
ムッとした所で近藤のゴツい手が優しく頭を撫でたものだから、どうにも気持ちが良くなって、少しの拗情はどこかへ飛んで行ってしまった。


(今はまだ子供でいいか)


近藤がこうして優しく頭を撫でてくれるのなら。


(子供扱い大歓迎)


鳥たちの囀りと風音。
それらが合わさり沖田の鼓膜を揺らした。

さながら子守唄のようなその響きに、少し固めの枕の心地よさに、頭を撫でるゴツい手の優しさに。


沖田は大きな安心感へ、落ちた。



End.

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