SS

□日日並べて刻薄-かがなべてこくはく-
1ページ/3ページ

●日日並べて刻薄-かがなべてこくはく-

光源はゆらり揺れる蝋燭のみ。
薄暗い部屋は血だまりが広がり、その中に立つ隊士達は数人になってしまった。
敵の数がはるかに多い。
そんな中にあって沖田は近藤の背にピタリと付き、近藤へ向けられる殺気だけに集中していた。
ふと、蝋燭の火が消える。
弱い光源はそれでも頼りになっていたらしい。
視力を奪われた次の瞬間、後ろで呻き声が聞こえた。
その声が聞き慣れたものだったから、沖田は嫌な予感に振り返る。


「近藤さん!?」


闇に慣れかけた目が捉えたのは、敵の刃に崩れ落ちる近藤の背中だった。


「近藤さん!!」







ここで、沖田はいつも目が覚める。

三週間前の攘夷志士との闘争で真選組は、沖田は、支えを喪った。
崩れ行く背を見た後の事を、沖田はあまり覚えていない。
気が付いたときには自分のものではない血に塗れて、敵の死屍累々を見下ろしていた。

近藤の死の光景を未だに毎晩夢に見て、沖田は毎夜に恐怖した。

なぜあの時近藤を守れなかったのか。
沖田の胸の中から後悔と自責が消えることはなかった。
それどころか日に日に思いは強くなるばかりで、いっその事土方の様に病んでしまえたらとすら考えてしまう。
そして自嘲するのだ。


(俺には守るべきものがまだある)



   
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ