SS

□切々と、舞う
1ページ/6ページ

●切々と、舞う


土方は、ただ一言欲しかったのだ。
ただ一言、目の前の男から拒絶の言葉が欲しかっただけなのだ。

けれどその目の前の男は、見た目の厳つさに似合わず心根の優しい人間で、なかなか拒絶の色を口から漏らしてはくれなかった。


二人の頭上には八分程の染井吉野が開いている。
四季の中で一等の美を誇れる桜頃合いだというのに、けれどこの日は朝から随分と変わった空模様だった。





     
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ