◆妄想綴り(text)◆
□砂幻
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風化した城に行きついた
さらさらと朽ちていく玉座に
栄光の時代の王を辿る
地下に眠る棺の中は既に空で、
古い土の匂いだけがやけに鼻をつく
砂塵が幻を魅せては還っていく
神秘的な王女と異国の王子の物語り
二人はお互いに惹かれあうけれど結ばれない
結末は悲恋。
王子はその手で王女の首に美しい糸を絡める
愛しい亡き骸を生涯傍らに置き続けた
現実にあった記憶なのか
それとも
語り継がれた御伽噺なのか
今ではもうわからないけれど
どちらにしろ一陣の砂風が見せた
不思議な物語り
だれかが亡くしてしまった
不思議な不思議な物語り
錆びついた王冠の下には今も
二つの薄汚れた骨が埋まっている