‡書庫‡
□小さな囲いの小さな恋†リゼ葉。完
1ページ/11ページ
雨…。
それはまるで今の僕の心の中を反映したかのような天気だった…。
今日は葉王に両親が殺された日…。
リゼルグは雨音の響き・93nる墓場の中、一つの墓石の前にたたずんでいた。
「父さん…、母さん…。必ず、強くなって敵を討つからね…。必ず強くなって…。あいつを…葉王を殺してやる…!」
毎年父と母の墓石の前で綴る葉王への憎しみの言葉…。
リゼルグはしばらく墓石の前にいたが踵をかえし、なんとなく教会の中に入っていった。乾いた床に水滴が落ち水溜まりができる。ステンドグラスの前にかかる聖キリストが張り付けにされた十字架…。リゼルグは十字架の前にくると跪き手を組み祈りを捧げる格好をとると旧約聖書を口にする。それはまるで唄のように教会内に流れた。
カタ…。
はっとリゼルグは後ろを振り向く。
「誰か…いるの…」
リゼルグは言葉を詰まらせた。驚いたからではない、リゼルグの目線の先には獣の耳と尻尾をつけた少年が佇んでいた。
真っ黒な澄んだ瞳がリゼルグをじっと見つめる。髪も瞳と同じ墨を流したような黒。透き通るような真っ白な肌。うっすらと桜色にそまった頬。花びらのように艶やかでふっくらした唇。
『天使』
ただ一つこの言葉だけがリゼルグの脳内に浮かび上がった。
花びらねような唇が動き音を発する。
「こんな所で何してるん?」
朝露を受けた若葉のような清らかな声…。
胸が高鳴る。
初めての感覚。
リゼルグは考えるより先に答えていた。
「こんにちは。僕の名前はリゼルグ・ダイゼル。リゼルグってよんでね。お墓参りに来たんだ、今はここで雨宿り中なんだ。」
少年はリゼルグが答えると嬉しそうに微笑んだ。
また、リゼルグの胸が高鳴る。
『可愛い…‥。て、僕は何を考えてるんだ?!同性にたいして可愛いだなんて…!!』
「リゼルグ?どうかしたんか?」
あわあわと慌てるリゼルグをいぶかしみ心配そうな顔を覗かせる。
「!?///〜〜〜っ!?」
真っ赤になるリゼルグ。
「だ‥大丈夫だよ…。そ、そうだ!君の名前教えてよ!」
すると少年は大きな綺麗な眼をさらに見開かせた。