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□【†ボウリング大会†】
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【†ボウリング大会†】













ボウリング場。

「「あけましておめでとーございます!
今年もよろしくしちゃってよ!
てなわけで、あの子のキスは誰の物!?
キス賭けボウリング大会ぃぃッ!!!」」

三上兄弟によるタイトルコール。

拍手をしたのは三上兄弟と時生だけだった。

やる気無く携帯を弄っている戸梶の隣で
筒本は小さな感動を味わう。

「凄え、さすが双子っすね!息ぴったり。」

「つか、アイツら今何つってた?」

多摩雄が首を傾げ、
拍手をしていたはずの時生は、
さあ?と答える。

三上兄弟は彼等との温度差を無視してルール説明を始めた。

「ルールは簡単だ!ストライクを出した奴は
この中から一人を指名する。
指名された奴はストライクをとった奴に
ご褒美のキスをプレゼント!!」

「指名された奴は強制だから拒否は許され無えぞ!!」

「……男だらけでやるもんじゃねえだろ。」

学と豪の説明を聞いた戸梶は嫌そうに顔を歪める。

しかし。

「「いや、や(ろう)りましょう!!」」

「俺も別にいいぜ?」

他の三人は意外に乗り気で、
唯一乗り気でない戸梶は五対一になってしまう。

「「戸梶感じ悪ィぞ!!」」

「……好きにしろ。」

溜息と共に了承の返事を吐き出した。













【†ボウリング大会†】















「先輩のキス先輩のキス…」

「多摩雄のキス多摩雄のキス…」

両隣で同じ事を呟き続けている後輩と友人に
戸梶はうんざりと舌打ちする。

「お前ぇらうぜえんだよ。
筒本からだろうが、さっさとやれ。」

ゲームを始めるよう促すと、
後輩は大人しく立ち上がった。

そしてボールを掴み、胸に抱えると時生を振り返る。

「ふっ……すんません、時生さん…………お先ーース!」

自信に溢れた満面の笑みを見た時生の目から笑みが消えた。

そして、首を横に振る。

「……甘い…まだまだ坊やだな筒本。」

そう呟いたかと思うといきなり立ち上がり、
店の入口に向かって笑顔で手を振った。

「あ!おーい!阪東くーん、こっちこっちー!」

「なっ…阪東ッ!!?」

戸梶や芹沢達がそちらを見遣ると、
そこには確かに阪東の姿があった。

その名前に投球フォームに入っていた筒本は
動揺して体勢を崩す。

ゴッ…と落ちたボールは、
ガタッと音をたてて随分早い段階からレーンの溝に落ちた。

「あっ!ああっ!!」

コロコロと虚しく転がっていくボールを見つめ、
筒本はその場へ膝をつく。

駆け寄ってきた阪東が声をかける。

「筒本!今年もよろ…」

「しくするかぁッ!!テメェのせいで芹沢先輩のキスが…!!」

うああっと大袈裟な悔しがり方で
筒本は両拳を床に叩きつけた。

その姿を見遣り、時生は計画通りだと笑みを浮かべる。

「これで筒本は完全に封じたな。
後は、三上兄弟がどう出るか……」

「次、時生の番じゃね?」














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