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□【†Sweet†】
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【†Sweet†】













「いっ…!!」

部屋の扉を開けた途端、
中から伸びてきた手に腕を掴まれて玄関先に押し倒される。

「なっ…てめぇ、何のつもりだこの野郎ッ」

戸梶はすぐに上に乗っかっている男を睨んだが、伊崎も彼を睨み返す。

「……てめぇこそ何のつもりだ。」

吐き出された声には怒りが篭っていて戸梶は首を傾げる。

「あぁ?意味わかんねぇ、退……」

「てめぇから誘ってきたくせに女の方がよくなったのか。」

戸梶は彼を退かそうとしたが、
ダンッと、顔の横に拳を叩き付けられて黙す。

スッと戸梶の目付きが鋭くなる。

「……何の話だ。」

「……………」

尋ねられた伊崎は唇を噛んで視線を逸らした。

肩が震えている。

戸梶は首を傾げながら伊崎の頬に手を伸ばす。

「……ねえ、瞬くん?どうしたの…?」

少しの間があいて口が開く。

「てめぇ…女と浮気したろ。」

「はあ?何言ってんだ。」

思わずきょとんとしてしまった戸梶を
彼は苛立たしげに怒鳴る。

「ごまかすなッ!女と腕組んで歩いてたじゃねえか!」

一瞬首を傾げたものの
記憶を辿るように視線をさ迷わせた後で。

「………それ、今日の帰りに見たのか?」

「……………」

沈黙を肯定ととって戸梶は皮肉げな笑みを浮かべて告げる。

「あれ……てめえに会いに来た女だぞ。」

「ああ?」

怪訝な顔の伊崎に戸梶は重ねて説明した。

「だから、瞬くんに会いに校門のとこに来てたんだよ。」

まあ、もう二度とこねえだろーがな。

たいして面白くも無さそうに呟くと、
少しの沈黙の後で尋ねる。

「なぁ…あの女、何?」

「知るかよ。」

伊崎は即答でそう答えたが、
戸梶は彼の肩を押し返しながら溜息を吐く。

「浮気したんだろ。」

「してねえよ!!」

退け、と肩に置かれた手が言うのを無視して怒鳴る。

彼は否定し続けているが戸梶の視線は冷たい。

「じゃあ何でお前に会いにわざわざ校門まで来んだ。」

「俺が知るか!!」

苛々と怒鳴った後で伊崎は珍しく不安げに尋ねた。

「本当にてめえの女じゃねえんだな…?」

「てめぇとは女の趣味合わねえよ。」

苦笑でそんな皮肉を言われ、伊崎は再び声を荒げる。

「知らねえっつってんだろッ!!」

「どうだか。退けよ。」

それでも戸梶は顔ごと視線を逸らすと
彼の肩を押し返す手に力を込めた。

伊崎はその手を取って叩き付けるように床へ縫い付ける。

そして彼の肩に頭を埋めて呟く。

「………嫌だ。」

「背中痛えんだよ。」

そんな文句にも彼は子供のように首を横に振る。

小さな沈黙があり、その後でふと戸梶の体から力が抜けた。

優しい声で囁くように尋ねてやる。

「………瞬くん、心配した?」

「……した。」

「………嫉妬した?」

「した。」

子供のように拗ねた声で頷く伊崎に苦笑してもう一度、
あの彼女の事について尋ねようとするが。

「あの女……」

「あんな女どうだっていいだろッ!!」

怒声に遮られる。

感情が高ぶっている伊崎に一瞬怪訝な顔をした戸梶は、
原因に思い当たってゆっくり口を開く。

「なあ、お前さ………」

「……何だよ。」

「もしかして泣いたのか?」

「………」

沈黙した伊崎に戸梶はどこか恍惚とした笑みを浮かべた後で、
彼の柔らかくない髪を撫でて突然、素直に謝る。

「ごめんね、泣かないで…」

甘い声に心を揺らされながら。

「……なあ、どこ触られた。」

「腕と…胸?」

その答えに伊崎は舌打ちを返して告げた。

「風呂入れ。」

「じゃあ、離して。」

「俺も入る。」

はっきりと告げて起き上がらせ、
手を掴んでバスルームに引っ張り込む。

戸梶は狭い脱衣所で彼に抱き着いて、甘ったるく囁く。

「……瞬くんの匂い、好き…マジ好き……」

「てめぇさっさと女の臭い落とせよ。邪魔くせえ。」

くそっ、と舌打ちして吐き捨てた彼に
戸梶は笑いながら制服を脱ぎはじめた。














【†END†】
あとがき
縋り付く瞬。##APPLAUSE##20071223.


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