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□【†Be annoyed†】
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【†Be annoyed†】














「あっ」

「あ?」

屋上の黒いトリプルソファー。

隣の後輩が突然あげた声に、
戸梶は怪訝な顔で首を傾げた。

「…てぇ…目にゴミ入った…」

「……へぇ。」

一言で疑問が解決した戸梶は、
さっさと手元の小説に視線を移す。

「ちょっ…マジで痛いっす」

「へぇ。」

愛煙を吐き出して興味無さそうに相槌を打つ。

筒本は涙目で戸梶のシャツを引っ張る。

「戸梶さん、マジで痛い痛い。」

「だから、何だよ。」

先輩の言葉はあくまで冷たい。

「とってくださいよー」

甘えた声を出した後輩に
戸梶は溜め息を吐いて本を閉じる。

「………上向け。」

ソファーの上に膝立ちになって筒本の顔を覗き込むが、
横からではやはり難しい。

「あー…遣りにくい。乗らせろ。」

舌打ちをして告げると、
戸梶は勝手に筒本の膝の上へ跨がって座った。

動かないように頬に手を添えて覗き込む。

よく見えないと、ぴたりと密着した戸梶。

筒本は思わず彼の腰に腕を回して支えながら、
不意に首が疲れたと正面を向いた際に
肩越しに見た先で殺気を放っている男を見付けて慌てる。

「げ!」

「動くな!」

気付いていない戸梶は不機嫌そうに眉を寄せるが
筒本はそれどころではない。

「ヤバイ!戸梶さんヤバイ!退いてください!」

「あ?てめぇ、人がわざわざ…」

「言ってる場合じゃないんすよ!後ろー!戸梶後ろー!」

「さん付けろ殺すぞ。」

注意しながらも言われた通り振り返る。

「伊崎?てめぇ何でこんなとこ……いってぇ!!」

目が合った途端に体が跳ぶ程に思い切り殴られ、
戸梶はコンクリートに尻をついた。

それを見下ろす伊崎の瞳は冷たい。

「てめぇ、何してんだ。」

「はあ!?何言ってんだテメェ!!ぐっ…がッ、がはっ」

わけもわからないままに腹部を数回蹴りつけられてうずくまる。

「何してんだって聞いてんだよ、変態野郎。」

もう一度足を振り上げた伊崎を
今まで状況についていけず呆然としていた筒本が
ハッとして止めに入り。

「ちょっ…待てよ!!」

「煩ェクソガキ殺すぞテメェは!!」

「誤解すんな!俺は芹沢先輩一筋だ!!」

戸梶さんの事可愛いとか思ってんのなんて
ぶっちゃけアンタだけだし。

と、勢いで余計な事まで吐き捨てる。

戸梶は怒るでも無くただ呆れたように溜め息を吐く。

「……てめぇ、まだ諦めて無かったのか。」

その後で、どうやら誤解の解けたらしい伊崎に歩み寄る。

「つか、てめえ俺が浮気したと思って嫉妬したのか。」

「………」

黙っている伊崎に向かって腹部を指差して。

「……これ、腹絶対ェ痣んなってんぞ。」

「だろうな。」

「何か言う事無えのか。」

眉を寄せてきつく言うと、ややあった後に。

「…………悪かった。」

という謝罪。

戸梶は笑みを浮かべて口を開く。

「じゃあ俺の言う事一つ聞け。」

「何だよ。」

眉を寄せながらも拒む気配は無い。

「目ぇ瞑れ。」

「………」

言われた通りに目を瞑るとすぐに、
唇に柔らかい感触がして
ちゅっと可愛らしい音と共にそれが離れる。

目を開くと、小首を傾げた恋人が一言。

「俺も。ごめんね?瞬くん。」

「お前もう他の男に触るなよ。」

「んー」

曖昧な返事で抱き着かれてその体をきつく抱く。

「えー何すかそれ…マジうぜえ…」

その様子を見ていた筒本はどん引きしながら思わず呟いた。

漸く筒本の存在を思い出した彼らは
そろって邪魔そうに彼を見る。

「てめぇ空気読んで出てけよ。」

「どう見たってこれからソファー使うだろうが、退け。」

足蹴にされた筒本は一瞬唖然とした後で
すぐさま尊敬する方の先輩に泣き付きに走っていく。

「えっ、ちょっ……センパーイ!戸梶さんがイジメますぅー!!」

「うるせぇ!!」

その背に怒鳴り声を投げ付けた後で
戸梶はソファーに腰掛けた伊崎の膝に跨がって座った。















【†END†】
あとがき
いつも犠牲になる可哀相な筒本。筒本が尊敬してるのは多摩雄だけど1番仲がいいのは戸梶だと信じ続けます。腐女子ズBEアンビシャス的な。##APPLAUSE##20071223.


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