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□【†Vorrei essere vicino a te†】
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【†Vorrei essere vicino a te†】













ばしゃばしゃ…

と湯舟のお湯が跳ねる音に続いて、
戸梶の不機嫌そうな声がバスルームに反響して吐き出される。

「………てめぇ、何でいつも俺が風呂入ってる時に
悪酔いして帰ってくんだ。考えらんねぇな、マジで。」

湯舟に足を組んで座っている
不機嫌な戸梶の首に抱き着いていた伊崎は、
何を思ったかその耳元に唇を寄せ。

「拗ねんなよ。一人にさせて悪かったな。」

そう囁いた。

戸梶の口元が引き攣る。

「俺は、風呂に入ってる時ぐれぇ
一人にしといて欲しかったがな。」



「つか、邪魔してんぞ。」



そんな二人にドアの方から
タイミングを計り間違った声が掛かった。

「は?なっ…何見てんだてめぇら…!」

いると思わなかった第三者の声に
ビクッと肩を跳ねさせた彼が、
ドアの方を見ると源治と牧瀬が突っ立っている。

戸梶は慌てて伊崎を押し退け、
バシャと音をたて隠れるように肩まで湯へ浸かった。

源治は平然と彼を見下ろしながら答える。

「伊崎ここまで送って来たの俺らだぞ。」

「悪ぃな、戸梶!」

とりあえずの謝罪は牧瀬。

「いいから扉閉めろ!」

いつまでも視線を送ってくる二人にそう怒鳴ると、
そんな戸梶を伊崎が庇うように立って源治達を睨む。

「てめぇら俺の女の裸見てんじゃねぇ殺すぞ。」

「てめぇも出てけ!」

すかさず怒鳴るが伊崎は怪訝な顔で。

「はあ?一緒に入るぞ。」

カッとした戸梶は彼の背中を突き飛ばして源治に告げる。

「滝谷!リビングで酒飲んでいいからこいつ連れてけ!」

「ああ、うん。」

がっちりと伊崎をキャッチする源治。

振り払おうとする伊崎。

「離せ。」

「いいから、行くぞ。」

問題無用で引っ張られて、
伊崎は湯舟の恋人へ手を伸ばす。

「勇次!」

「うぜぇ!」

一蹴して戸梶はドアを思いきり閉めた。

湯舟に浸かり直し、
入浴剤の甘い香りに溜め息を吐きながら小さく呟く。

「……馬鹿野郎…」

その頬はたぶん湯舟の熱さのせいだけではなく、
ほんの少し赤く染まっていた。















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