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□【†Stomachache†】
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【†Stomachache†】
















休日、ソファーに深く腰掛けテレビを見ていると、
珍しく寝室に篭っていた戸梶がふらふらと出てきて言った。

「伊崎…腹痛ぇから薬買ってこい。」

伊崎は呆とした頭で思い浮かんだ事を
無意識に口にしてしまう。

「………生まれるのか?」

瞬時に、本当に苦しんでいるらしい戸梶の双眸が冷たく細まる。

「……何がだ。生まれねぇよ、
生まれたとしてもそれはウンコだろ。」

「便所に篭ってろクソ野郎。」

期待していたわけでは無いが、
彼の言い方にむっとした伊崎は
テレビのチャンネルを回しながら吐き捨てた。

少し考えた戸梶は腹の痛みに耐え切れず、
ソファーに腰掛けている伊崎の足元に膝をつき、
膝に手を乗せて縋り付く。

「……あー、生まれるー生まれるぅー瞬くん、お願いぃー」

「生まれんのはデケェクソだろ。」

顔も見ずに吐き捨てられ、
戸梶は不機嫌さを丸出しで立ち上がると彼を睨み付ける。

「……最悪。てめぇ俺が苦しんでんのに無視か。
もうてめぇみてぇな最低野郎には頼らねぇ。」

そう宣言した彼は携帯を取り出し、
とある番号を呼び出した。

数回の呼び出し音の後に相手が電話に出る。

「俺。筒本、お前今どこにいんだ。ちょっと薬局行って…」

ブツッと、会話の途中で通話が切られた。

「………あの野郎…」

会ったらシメる!

と憎々しげに吐き出した彼を、伊崎が鼻で笑う。

さらに苛立ちを募らせながら、
戸梶は自分の部屋の場所を知っていて
尚且つ無償で従順に言う事を聞きそうな相手の番号を探した。

そして、ある番号で手が止まる。

一瞬どうしようかと悩んだがしかし、
溜め息と共に不満を吐き出して、
結局そこで手をうつ事に決めた。

「いいか……牧瀬で。」

「待て。」

慌てて振り返った伊崎から制止の声が掛かり、
腹の痛みにただでさえ苛立っている戸梶は
思いきり不快そうな顔をする。

「今更遅ぇ。」

「てめぇ、何で牧瀬の番号知ってんだ。」

「交換したからに決まってんだろ。」

「はあ?」

「もう煩ェ。話かけんな。」

苛々と声を吐き出した伊崎に、
戸梶は相手をするのが面倒になり、無視して電話をかけた。

呼び出し音の後に少し慌てた様子で相手が電話口に出る。
















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