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□【†Tu me fais craquer†】
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【†Tu me fais craquer†】













バスルーム。

洗髪剤のついた髪を洗い流していると、
いきなり背後の扉が開いて、戸梶は肩を揺らした。

はっとして振り向く前に抱き着かれてまた肩を揺らす。

「…伊崎?」

だよな。

と確認をとりながらシャワーの湯を止める。

肩に乗せられた頭が頷くのがわかって、内心安堵の息を吐く。

しかし、降り注ぐ湯を止めた途端漂ってきたのは酒の香り。

人がシャワーを浴びている時に乱入してくる程
酔ってるらしい彼に眉を寄せる。

「…離れろ。」

「勇次。」

「は?」

滅多に呼ばない下の名前で呼ばれて目を見開く。

彼は続けて。

「愛してる。」

と口にした。

「っ…!?」

言葉と共に顎を掴まれて、無理矢理唇を合わせられる。

その後すぐにどうにかキスからは逃れたのだが、
太腿を下から上へと撫で上げる彼の手に気付いた戸梶は
慌ててバスルームを出ようとした。

が、がっちりと抱きしめてくる腕に引き止められる。

「出る。」

「行くなよ。」

「や…止めろ。」

耳元で熱く囁かれて、
酔っ払いの戯言とわかっていながらも思わず顔が赤くなる。

首筋に彼の唇が落ちてきて。

「好きなんだ。」

そんな、告白。

「っお前…!その酔うとふざけた事言う癖どうにかしろ。」

「ふざけてねぇよ。マジに言ってる。」

好きな男から、
普段は聞かない愛の言葉を熱心に囁かれて、
心臓が煩い。

上がった体温のせいで瞳が潤んだ。

押し返す手には既に力が入っていない。

それでも、どうにか叩き起こした理性で告げる。

「ここじゃ嫌だ。出るから、待ってろ。」

伊崎は渋々といった様子で腕を離すと
壁に背を預け、腕を組みながら言われた通りに待つ。

……素直過ぎて気持ち悪い…

と、失礼にも命令した本人はそう思ったが、
何にしても今のうちかと、
濡れた体をタオルで拭いた。

シャツを羽織る。

と、半分しか袖を通していないというのに
腕を引かれて部屋から連れ出されてしまう。

「伊崎!てめっ…」

制止の声はやはり聞き入れられず、
ほぼ全裸の戸梶は彼に引きずられるようにしてついていく。

駆け込んだのは寝室。

「いっ……!!」

ベッドに投げ飛ばされる。

彼を受け止めたベッドのスプリングが激しく軋む。

その揺れがおさまらないうちに、伊崎は戸梶の上に飛び乗る。

「ぁ……」

首筋に舌を這わせられて思わず声が漏れた。

上がってしまった己の声に行為を期待するような
甘い響きが混じっていて、
戸梶は羞恥に唇を噛みながら抵抗を諦める。

彼が、もう好きにしたらいいと思った途端に、
しかし伊崎の動きが止まった。

そして、どすんっと男一人分の体重が落ちてくる。

「ぐあっ…」

思わず呻きが漏れた。

重い!!と怒鳴りそうになる。

だが、耳元で聞こえはじめた微かないびきに
そんな文句を言えなくなる程に脱力してしまった。

戸梶はゆっくりと寝ている伊崎の下から抜け出す。

ベッドヘッドに背を預けて座ると伊崎の頭が彼の腹の上にくる。

サイドテーブルにある煙草をとって火をつけながら、
寝ている恋人の髪を梳いた。

悪気など微塵も見せない整った寝顔に
戸梶は吸い込んだ愛煙を愛しげに吐きつける。

「……死んじまえ、最低野郎。」

小さく呻いて眉を寄せた伊崎に、
戸梶は笑みを浮かべてつけたばかりの煙草の火を消した。
















【†END†】
あとがき
たぶん一緒に暮らしはじめてすぐの頃。
酔うと告白癖のある瞬と酔っ払いだとわかっていても毎回ドキドキしてしまう勇次。##APPLAUSE##20071214.


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