V

□【†SISTER†】
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【†SISTER†】














寝室の扉を開けた途端、伊崎は目を見開いて固まった。

目の前にはサイドテーブルにカメラを置いて
床に座り込んだ自身を撮影している戸梶の姿。

しかも彼は黒地に赤い花の咲いた振袖を身に纏っていた。

伊崎は呆然と尋ねる。

「…………何やってんだ。お前。」

「DVDレター。」

振り返った戸梶はあっさりと答えたが、
現在の状況はたった一言で説明しきるには無理がある。

全てが理解不能であったが、
伊崎はとりあえず一番気になった事を尋ねた。

「その恰好何だ。」

戸梶は両手を胸の高さに持ち上げ、
袖の柄を伊崎に見せながら小首を傾げる。

「姉貴が贈ってきやがった。着ろっつーから
着てるとこ録画してやってんだよ。
……お前も入るか?」

そう言って場所を空けた戸梶の側に腰を下ろし、
振袖に触れてみながら伊崎は呟く。

「つか、お前姉貴居たんだな。」

聞いた戸梶はきょとんとした。

「あ?ここの家賃払ってんの姉貴だぞ。」

「……親じゃねえのか。」

怪訝な顔をした伊崎に、戸梶は…
そう言えば言ってなかったか…
と呟き、説明する。

「親には俺と姉貴で住んでるって言ってあるからな。」

「………姉貴は?」

彼はそう言うが、一度も会った事が無い伊崎は
首を傾げっぱなしだ。

「一人暮らししてぇって言ったらここくれたんだよ。」

「は?」

戸梶はあっさりと答えたが伊崎は軽く目を見開く。

続けて言い難そうに戸梶は口を開いた。

「うちの姉貴…常軌を逸したブラコンだからな。」

溜息が漏れる。

伊崎は彼を上から下まで眺め、
前髪を下ろして耳の上辺りにつけている
大きな花の髪飾りに触れながら言う。

「……それでこんなもん贈ってくんのか。」

普通はいくらブラコンでも弟に女物の和服や
花飾りを贈ってきたりしないだろう。

常軌を逸したの意味を把握しつつ、また振袖を触る。

高そうな生地。

「姉貴仕事何してんだ。」

「ホステス。」

また即答。

「へえ。これ古着か?」

店で着た服だろうか、
と伊崎が首を傾げると戸梶は首を横に振った。

髪飾りがしゃらりと優美な音を立てる。

「新品だろ。姉貴は黒似合わねえからな。」

少しずれたそれを伊崎の指先が直す。

彼は戸梶の艶やかな黒髪に触れながら告げる。

「お前は似合うな。」

「は……?」

唐突な言葉に目を見開く。

呆然としてる間に彼の唇は伊崎のそれで塞がれた。

「んっ…瞬くん、ダメっ……!」

肩を押し返してくる手を無視して笑みを浮かべる伊崎。

「姉貴に見せてやれよ。」

途端、戸梶は真顔で告げた。

「……………………お前、殺されんぞ。」

戸梶の顔が余りに真剣なので伊崎は動きを止め、笑みを消す。

「…………お前の姉貴何々だよ。」

伊崎の疑問に戸梶ははっきりと答えた。

「だから、極度のブラコンだっつってんだろうが。」
















【†END†】
あとがき
勝手に姉をつくってしまいました…!!
すみません!!この話だけの設定で無視していただいて結構ですから!##APPLAUSE##20080110.


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