V

□【†好きなところ†】
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【†好きなところ†】















屋上。

トリプルソファーの上。

おとなしく雑誌を読んでいたと思った後輩が一言。

「やっぱ、夫婦でもちゃんと好きだとか
言葉にしないとダメですよね。」

「ああ?」

戸梶は怪訝な顔で彼の手元を見る。

読んでいるのはバイク雑誌。

おおよそ、そんな言葉が出てくるとは思えない。

先程の台詞の説明は筒本の口からあっさりと出た。

「この前うちの姉貴が旦那と揉めたんすよ。」

「へぇ」

興味無さそうに相槌を打つ戸梶。

筒本は気にする事無く尋ねる。

「戸梶さん達ってどうなんですか?」

「何ふざけた事聞いてんだ。」

呆れたような溜息を吐かれて、筒本は苦笑した。

「そうですよね。言わないっすよね。」

戸梶は眉を寄せ、さも当然であるように告げる。

「言うだろ、普通。」

「は…はああ!?そっちっすか!?」

驚愕の悲鳴をあげた筒本に戸梶は首を傾げて言う。

「たりめぇだろ。」

「ツンデレのくせに!?」

はっきりと言った筒本。

戸梶は双眸を細めて低く尋ねる。

「……てめぇ、前歯と奥歯どっちいらねぇんだったか。」

「俺いらねぇなんて言った覚えねぇんすけど。」

筒本は真顔で首を横に振った。

その後で、心底わからないと怪訝な顔で戸梶に尋ねる。

「大体、戸梶さんて伊崎のどこが好きなんすか?
俺あいつのイイ所一個も見つけらんないんすけど。」

失礼な物言いに多少むっとしながらも、
戸梶は躊躇う事無く口を開く。




「顔。体。声。指。セックスの仕方。

笑った顔、照れた顔、泣いた顔、疲れた顔、怒ってる顔。

俺の事が好きで堪らねえとこ。

独占欲が強いとこ。

箸の持ち方が綺麗なとこ。

飯残さねえとこ。

甘えてくるとこ。

甘やかそうとすると……」




「ももももういいですっ!もうマジすんません!
勘弁してくださいっ」




延々と続きそうな惚気を筒本は慌てて止める。

止められてやっと筒本の顔を見た戸梶は軽く目を見開く。

「………………お前、何泣いてんだ。」

戸梶さんのせいじゃないですかーっ!

と筒本は泣きながら走り去り、
残された戸梶は……
どうでもよさそうに新しい煙草に火をつけ、
空いたスペースへ横になった。















【†END†】
あとがき
惚気られて泣いた筒本。
とにかく伊崎LOVEな戸梶。##APPLAUSE##20080110.


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