【†WildCat & Dread†】
□【†Winter:G†】
1ページ/1ページ
【†Winter:G†】
学校の近くの公園。
登校前。
そして、自販の前。
擦れ違い様。
寒いと呟く声が聞こえて、源治は思わずそちらを見遣る。
無理矢理伸ばした袖、
両手を口元へ持っていき、
熱い息を白く吐きかけながら、
少し小走りで通り過ぎていく見知った男。
ピッ…
と思わず押してしまったボタンの音に意識を自販に戻す。
出てきた物を取り出し口から出して、眉を寄せる。
そして。
「芹沢!」
先程の人物を呼び止めて、その缶を放って渡した。
受け取った多摩雄は手の中のそれを見て怪訝な顔をする。
源治はもう一本別の物を買いながら。
「間違えたから、やる。」
と、一言。
そんな彼が新しく取り出したのは、ホットのココア。
多摩雄の手にあるのはホットのブラックコーヒーだ。
立ち止まった多摩雄は
手の中の缶コーヒーで暖を取りながらも不満げに告げる。
「俺、ブラック飲めねぇし。」
「俺も。」
「交換しろ。」
「はあ?」
いつの間にか二人は向かい合って立っている。
下から睨み上げられ、源治は眉を寄せ、
多摩雄の言葉を無視してココアの缶を開けて口をつけた。
舌打ちした多摩雄の唇に、隙をついて源治の唇が重なる。
「ぶっ」
思わず変な声を出した多摩雄に笑いそうになりながら、
彼は開いた口の中に先程含んだココアを流し込んだ。
多摩雄の喉が上下して、
それが飲み込まれたのを知ると、
源治は彼の少し荒れた唇を舐めて離れる。
「…一口な。」
呆然としている多摩雄を見下ろし、
にこりともせずに告げると、
横を通り過ぎて行ってしまう。
多摩雄は、己の唇を舐め、残された甘さと、
寒さを感じなくなった頬に舌打ちをする。
そして手の中のブラックをじっと見つめた後で呟いた。
「冷めてから戸梶に買い取らせるか。」
【†END†】
あとがき
たぶん冷めてるのに200円とか300円します。
筒本の財布から300円出す戸梶。
もしくは、持ってたコンビニのパンとかと交換してくれる時生。##APPLAUSE##20071213.