【†WildCat & Dread†】

□【†First Kiss†】
1ページ/1ページ













【†First Kiss†】












屋上。

いつもなら戸梶がいる場所。

黒いトリプルソファーに筒本は
仰向けになって寝息をたてていた。

「……」

それを見つけた阪東は暫く呆と立っていたが、
不意に歩み寄ると、
寝ている彼の顔の横とソファーの背に手をつき、
腕の中に閉じ込める。

そして、薄く開かれた彼の唇に己のそれを重ねた。

「ん……」

声が上がり、己の下にある体が身じろぐ。

起きてしまいそうな気配に、
しかし一度重ねてしまった唇は離し難い。

衝動的に角度を変え、もう一度口付けてしまう。

と、筒本は目を開けた途端視界に入った、
自分に覆いかぶさる男の姿に気を動転させて暴れる。

本気の抵抗で蹴り飛ばされた彼はコンクリの床に尻をつく。

立ち上がった筒本に睨みつけられ、
彼は気まずげに視線を逸らした。

手の甲で唇を拭いながら、
自分に口付けていた人物が阪東だと気付いた彼は、
カッと頭に血を昇らせる。

高ぶった感情に引きずられて瞳が濡れた。

そこから、涙が零れるまでにそう時間はかからなかった。

鳴咽のような引き攣った声を聞き、
阪東はハッとして筒本を見る。

「筒も…」

その顔面に全力の膝蹴りが入った。

思いっきり真芯を捕らえられた阪東が倒れるのも構わず、
筒本はそのままの勢いで屋上から走り去る。

片腕で顔を隠しながら走って行く筒本に
擦れ違う何人かが振り返った。

そして。

「……………あ?」

前方をこちらへ向かって歩く見知った男を見つけた筒本は
自分より小さいその体に抱き着いた。

「筒本…?」

怪訝な顔をしながらも、
無理矢理引きはがす事はせず、
吸っていた煙草の火を壁で擦って消してくれる。

筒本は、わっと泣き声をあげた。

「戸梶さーーん!俺、ファーストキスは
芹沢先輩とって決めてたんですよーーーーっ!!」

「お前、そんなアホな夢抱いてやがったのか。」

びえーっと泣きわめく後輩の背を叩きながら、
戸梶は呆れを含んだ溜め息を吐く。

筒本は、戸梶から離れると口元を何度も腕で拭いながら。

「それなのに…それなのに…っうぅ〜…気持ち悪いー!!
あんな奴に!あんな奴にーーっ」

誰?

と、思ったがすぐに、この男にキスしようとする奴など
一人しかいないかと思いいたり眉を寄せた。

「そんなに嫌だったのか。」

なんだかんだと上手くやっているのかと思っていた。

「大嫌いです!!」

きっぱりとした即答が返り、
戸梶は少し考える間に沈黙する。

「…………じゃあ」

そう言って彼は、筒本の髪を掴むと軽く踵を浮かせ、
擦って赤くなった唇を己のそれで奪った。

「っ」

相手が拒絶する暇を与えずに離れると。

「口直し。芹沢じゃなくて悪かったな。」

口元に笑みを浮かべながらそんな風に言って去っていく。

置き去りにされた筒本は暫く呆然としていたが、
驚いたせいか、涙はすっかり止まっていた。











【†END†】
後書き
秀人さんがめっさ可哀相なことに…!すみません!
私が勇次にどれだけ夢を見ているのかが明るみになりましたね。
戸梶は筒本にとって悪いお兄さん的存在だったらいいと、そんな願望。##APPLAUSE##20071208.


[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ