君と僕の諸事情
□諸事情 18
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ジャラリ、金属音が耳に届いて私は不快感を露にした。
「渚っ!!」
私がそばに寄れば月明かりで顔が見えた。
少し痩せたのだろうか。
髪の毛は伸びたままで、まるで渚と私が入れ替わったみたいだ。
「…髪の毛…もったいないな。」
ジャラッと音を立て、渚の手が私の髪に触れた。
あぁ、渚だ。
私のお兄ちゃんだ。
「っふ…渚、渚ぁっ!!」
「泣き虫。」
やさしく笑う渚の顔を見てほっとした。
生きていてくれた、それだけで安心できた。
「悪いけど…感動の再会は後にしよう。」
「…お、秀一。…と誰だ、お前。」
渚の声が一気に凄みを増した。
多分知らない顔の楓がいたからだ。
「渚、それ後にしよう。」
「…秀一のくせに、まともなこと言うなよ。」
「…うん、ごめんごめん。」
「何だその余裕な態度。」
「…うーんダメだ外れない。切るしかないか。」
「ん?無視かコラ。」
「…渚うるさいよ。」
ガチャンと大きな音がしたかと思うと、手錠のチェーンが切れた。
ふらりと渚が立ち上がると、私も渚を支えるように立ち上がった。
「湊、悪いな。」
「ううん。大丈夫。行こう。」
こうして私たちは時計塔を後にしたのだった。