君と僕の諸事情

□諸事情 17
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これ以上誰かに迷惑なんて掛けられない。
そう思って、私はこっそりと部屋を抜け出そうと起き上がった。
隣で寝ている雅晴がゴロンと寝返りを打ち、私はピクリと足を止める。

「んー。」

寝言を言うと、もう一度寝返りを打つ雅晴。
どうやらおきている様子はないらしく、私はひっそりと息をついた。
そしてゆっくりとドアを開けた。
廊下は真っ暗。
正直に言うと怖い。
真っ暗だし、少し肌寒いし。

昔なら渚がいつも感じ取って私を助けてくれた。
寒い時は上着を持ってきてくれたし、怖い時は手をつないでくれた。

いなくなって始めて気付いた。
やっぱり渚はお兄ちゃんなんだって。
いつも守ってくれていたんだって。

だから、今度は私が守る番。
渚は私の手で助け出すんだ。

「どこ行くの。」
「っ!!」

不意に後ろから掛けられた言葉。
振り返れば、そこには秀一が立っていた。

「秀一…」
「どこに行くの、湊。」

声自体はとても小さい。
だけど、全てわかっているような口調。
私が何も言えないでいると、秀一は私の傍までやってきた。

「湊、渚は湊のお兄ちゃんだよ。
だけどね、僕の親友なんだよ。」

ニコリと笑う秀一。

「だから、渚を助けたい気持ちは同じだよ。」
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