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□囚われた魂を解き放て
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「あー疲れた」

陰陽寮での仕事を終えた昌浩は家に帰るべく路をテクテクと歩いてた

「今日は一段と忙しかったな」

「やっぱり。もっくんもそう思う?」

昌浩の横にはいつものように物の怪の姿に転じている紅蓮が付いている

物の怪はヒョイと器用に2本足で立って、これまた器用に腕組みをしながら頷いた

「これは孫の出番かもな」

「えっ?どういうこと?」

物の怪の『孫』発言よりも何かを含んだような言い方が気になった

「いやな。さっき陰陽寮で耳にしたんだが。最近右京の辺りに妖が出るらしい」

「へーどんな?」

時は平安
人と妖が一緒に住まう時代

しかも、左京よりも妖が住み着き易い右京には妖がたくさん居る。
その中で話題になるなんてよっぽど危険な妖なのだろうか

「女の妖で、待ってるんだとよ」

「待つ?だれを」

「さぁ俺もよく知らんが、夜中に通った人を朽ちかけた邸に引き摺り込んで、そいつの顔を見て『あの人じゃない』と呟くらしいぞ」

「その引き摺り込まれた人は帰ってきたの?」

「あぁ。何人かそれに遭遇したみたいだが皆帰ってきてるみたいだ」

軽く助走を付けて昌浩の肩に飛び乗り、物の怪は続ける

「だが、一人目が見た妖と二人目が見た妖とは微妙に異なってるらしい。段々狂暴になってると言うか、陰の気が集まってきていると言うか」

「陰の気……その妖、鬼に変じてしまうかもね……」

人の想いは重い。
それ故に陽の気を集めることができる
また、それとは逆に陰の気も集めることができる

もとは人でも心に陰の気が溢れ変えればいくらでも鬼に転じることが出来る。


ましては人では無く妖。
陽の気よりも陰の気を呼び易く、心に蓄めれる容量が大きい分、鬼になればやっかいになる

「俺が聞いたのはそれぐらいだ詳しい事は清明に聞け」

「うん。そうだね」

最近夜警に出てなかったから知らなかった。
取り返しのつかない事になる前に祓うなり調伏するなりしなければ

昌浩は早く邸に帰るべく歩を早めた







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