文章1

□FIRST ERRAND 3rd scene
2ページ/5ページ



雲雀のおかげで俺はなんとか飛行機に乗ることが出来た。
とんだ一苦労だ。海外に出るのがこんなにも大変なことだとは。
何はともあれ席に着くことも出来たし、これからゆっくりしよう。
せっかくなのだから一眠りするかな。
飛行機が動くその振動に揺られてウトウトし始め、そのまま俺は眠り込んでしまった。

「・・・お客様、お客様。お食事のサービスでございますがよろしいでしょうか」
・・・なんだ?食事?・・メシか・・?
「お休みのところ申し訳ございませんお客様。ミールサービスでございます。お飲み物はいかがなさいますか?」
「ああ・・。すまん。ウーロン茶をくれ」
「畏まりました。少々お待ち下さい」
女が茶を入れている間に、俺は胸ポケットから財布を取り出した。
「どうぞ。ウーロン茶でございます」
「すまんな。いくらだ?」
財布を開けて小銭を触っていると、女が驚いたような顔をして俺を見ているではないか。
それから少し苦笑いして俺にこう返す。
「いえ、お客様。こちらはサービスでございますので御代は結構ですよ」
そ、そうだったのか・・・。いらん恥を掻いてしまった。
俺はすまんと返事をしてさりげなく女から顔を逸らした。
しばらくすると食事が運ばれてくるのでそのまま待てとのことだった。
言われる通り待っていると、確かに食事を運びに来たのは来たのだが、今度は金髪の外人女に代わっている。
俺は厭な予感がした。
「Excuse me.Which food doyou want? Beaf or fish?」
予感的中だ。やはり英語できたか。
どうするか。フィッシュがどうとか言っていたな。魚か?
・・・無理だ。もはやどう答えて良いのか検討もつかん。
「う・・・、あいきゃんすぴーくいんぐりっしゅ!」
俺は雲雀に教えて貰った常套句を思い切って口にしてみる。
金髪の女は少し困った顔をしてから、今度はゆっくりと分かり易く言葉を口にしてくれた。
「Oh・・Okay.Which like? Beaf or fish?」
なるほど。ビーフかフィッシュかと言う有名なアレだな。
「びーふだ!」
俺が答えると、「OK!」と嬉しそうな顔をして食事の入ったプレートを取り出す。
無事に食事にありつけて一安心だ。
しかし本当に「びーふおあふぃっしゅ」と言うのはあるのだな。
テレビの中だけだと思っておったわ。

飯を食ってからまた俺は眠りに就いた。
なんせ12時間も飛行機に乗っているのだ。潰せるうちに時間は潰しておかんとこの狭い空間で何をして過ごせと言うのか。
しかし2、3時間も空かない内に人の眠りを叩き起こしては、やれ軽食だの、気流が悪い場所を通過しているからシートベルトを締めて椅子を戻せだのと、おちおちゆっくり寝てもいられない。
飯なんぞ何度食ったことか。何をこんなに出してくるんだ。
軽食なんだか主食なんだか区別がつかん。
大体12時間のフライトとは言え、ずっとこの狭い椅子に座りっぱなしで腹が減るかって話だ。
さっき食った物もまだ消化しとらんと言うのに次から次から持ってこられて、俺はフォアグラ用のガチョウにでもなった気分だった。。
乗継ぎ地であるローマに着いた時には、もうすでに俺は疲れきっていてげっそりしていた。
確か飛行機の乗り換えがあるのだったな。
どうすれば良いのか全く不明だが、とりあえず人の流れに付いて行ってみるか。
狭い通路を抜けると広い通りに出る。
ここまで来ると、人の流れに付いていけば間違いなく成田での二の舞になると俺も学習して、俺が進むべき場所を探して辺りを見回してみた。
しかしこれまた見事に英語ばっかりで俺は途方に暮れてしまった。
どうするか。しかし乗継ぎ便は2時間もしないうちにこのローマを出てしまう。
でも何処に行けば解らない。
俺は諦めて雲雀に電話することにした。


    
次へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ