03/31の日記

23:54
手フェチはわたし。
---------------
 ヤコを抱えて湯舟に浸かっていた時だった。
 薄い腹に手を回し、時折抓ってやったり胸を揉んでやったりしていたのだが。



「おっきいね・・・」



 それは状況が状況ならば、弄りがいのある言葉ではあった。しかし残念なことに、ヤコの興味の矛先は我が輩の手なのだ。
 ヤコが取る手に馴染んだ手袋はない。せめて風呂では外せと口煩く言われ、逐一返すのも面倒になり妥協したのだ。
 ヤコは手を握り、爪をなぞり、筋を辿って、最後には手を合わせた。何をしているのかと見下ろせば、どうやら見比べているようだった。
 確かにヤコの手とは大まかな形以外は似て非なるものではある。魔人と人間である前に、男と女という性別の差があるのだから、それは当然のことだ。



「――痩せっぽちだが、確かに華奢な造りをしているな」

「ひんそーですいませんね!」

「貴様も曲がり形にも雌だったということだな。先程確認したばかりだが」

「一言二言多い!」



 浴室に声を反響させて、ヤコは頬を膨らませる。



「気になっただけなのに」

「当然のことを気にする理由が分からん」

「むー。ネウロの、そうゆう何でも理屈で考えるの良くないよ」

「性分なのだから仕方あるまい」



 そう切り捨てれば、変わらず納得のいかない顔をしていたヤコだが、唸るだけ唸って諦めたようであった。
 放っておいて目下の旋毛を見下ろしていると、不意に水面が波打った。我が輩の両手を取ったヤコは、それぞれを己の頬に当て、くふふと笑い声をあげている。



「・・・なんだ、気味の悪い。先ほどまでのしかめっ面はどうした」

「んー何かもういいや。ネウロの手、好きだから」

「手だけか?」

「そう思うの?」



 ヤコはぐりんと上向き、笑いを隠せていない顔で問い返す。



「・・・言うではないか」

「たまにはいいでしょ」

「たまには、だがな」

「何よー」

「ふん」




「・・・あつくなってきたよ」

「そうか?」

「あががろうよー」

「もう少し付き合え。そう、1時間くらい」

「むりー」

前へ|次へ

コメントを書く
日記を書き直す
この日記を削除

[戻る]



©フォレストページ