時を操る男
□−拉致−
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シロイセカイ。
上も下もわからないような、どこまでも白い世界。
確かに自分は立っているのだから、地面はあるのだろう。だがそれが肉眼で確認できない。
ここが時空の中だという事ぐらい、言われなくてもわかる。自分だけが連れ込まれたという事も。
ビームサーベルの転送を試みてみる。
諦め半分だったので、本当にサーベルが現れた時は少し驚いた。
正々堂々と闘って消そう、という事か。
「その心掛けは良いでありますが…後悔すんじゃねえゼ?」
姿の見えない敵に対して、ケロロがそう口にする。
足が震えてるのは武者震いってヤツなんだよ、きっと。
じっとその場にとどまって様子を見る。だがいつまで経っても変化が起こらないので、恐る恐る一歩踏み出してみた。
やっぱり何も起こらない。
(もしかしてアレ?我輩だけ切り離して放置プレイという…)
いやいや、それはさすがに無いだろうと考えを改める。
だってほら、タムムなら居るじゃないか。
真上に。
「本当に君は緊張感が無いね。」
「褒められてる気がしないでありますな。」
時空のおかげか、スラスラと紡がれる言葉。
シロイ空間から生み出されるように、タムムの姿が現れケロロの目の前に降り立った。
ふわりと翻るマント。その黒と赤のコントラストが、シロイ世界の中に異物感を植えつける。
「でもね、ケロロ。ゆっくりしている暇なんて、君には無いんだよ。」
与えても無いからね、とタムムが笑う。
「どういう意味でありますか…?」
「時空の中では時の流れを、現実より早くも遅くも出来るんだ。」
それは分かってるよね。だって初めの時空だって、現実より速く時が流れていたじゃないか。
でも、この時空は逆。それも、二時間で一日、なんて生易しいもんじゃない。
「早くこの時空から抜け出さないと…キミの大事な人たちが皆、死んじゃうよ?」
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