時を操る男
□−出現−
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小雪が、あらぬ方向へクナイを投げつけた。
その瞬間、何もなかったはずの空間に、新たな影が現れる。
灰色の身体に、黒いマントとシルクハット、そして左目の片メガネ。尻尾の生えたケロン人は、無表情のまま宙に浮いて小雪を見つめている。
小雪がどこからか取り出したクナイを構え、灰色のケロン人に飛び掛った。
「小雪ちゃん!」
それはあまりにも速く、誰にも止めることは出来なかった。
灰色のケロン人以外は。
彼が右腕を突き出した瞬間、小雪の動きが止まった。
突然小雪の体が発光し、光が散ったかと思うと小雪の姿はもうそこにはない。
「っ!?」
夏美と桃華が息を呑む。
信じられないと、その場の皆が目を見開いた。
「何故、このような事を…」
「ボクタチハ、トキヲアヤツルヘイキ。ダレニモトメラレナイ…――」
その言葉を最後に、灰色のケロン人は姿を消した。
「わ、我が輩達が一体何したってのさ…」
ケロロの呟きは、空しく消えた。
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