時を操る男
□第一章 −発動−
2ページ/5ページ
翌朝。
「寝坊したぁ〜っ!!」
日向家の二階から、そんな声が轟いた。
慌てて着替えながら、長女夏美が階段を駆け下りてくる。
あれ、夏美ちゃんまた寝坊ですか?
「またとは何よ!」
失礼しました。
呆気にとられる弟の横を素通りしながら、制服のボタンを留めて、サラダや目玉焼きを高速で食べる。
ちょっと行儀が悪いけど、急いでるんだから仕方が無いよね。
トーストをくわえ、玄関でまだ呆気に取られている弟の横で、夏美は靴を履き始めた。
「もう、おこひてよ、ふゆきっ」
「あれ、夏美殿たち、今日は日曜日なのに学校でありますか?」
ゴム手袋をはめたまま、ケロロが玄関に現れた。
何言ってるんですか軍曹、今日は月曜日で…
「部活の助っ人頼まれてるのよ、いってきまーふ!」
「僕はオカルト部の発表会が…。じゃ、行ってくるね、軍曹。」
「いってらっしゃいであります!」
元気に玄関を飛び出していく夏美と冬樹に、ゴム手袋のはまった右手を元気に振るケロロ。
バタンとドアが閉じると、ケロロはふぅとため息をつく。
せっかくの日曜日なのに、慌しいでありますな。コレだからペコポンの学生は…。
「さて、見送りも済んだし、風呂掃除も後ちょっとで終わるでありますな。次は洗濯物を干して、食器洗いをして…」
あの、軍曹ちょっとちょっと。
「なんでありますか、ナレーター殿? 我が輩、この週に一度しかない、なんて素敵な日曜日を充実させるための計画を…」
今日って月曜日じゃなかったですか?ほら、だって昨日が日曜日…
「何言ってるんでありますか。土曜日の間違いデショ。」
いや、だって昨日確かに…
「あーもーいいからいいから。日曜日だろうがなかろうか関係ナッシング! 今日はさっさと家事を片付けて、ギャンを作るんであります!」
そう言いながら、ケロロは風呂場に引き上げる。
…私、ボケてきたんでしょうか…
そんなナレーターの呟きだけが、空しく玄関に消えた。
.