ケロロ小隊〜地球侵略開始までのプロローグ〜
□そのI
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「いやはや、ケロンのアサシンの噂は聞いていたが…これほどのものとはな。だが…――」
元帥が、見下した目でゼロロを見た。ギロロがそれに反応して、ゼロロを抱く腕に力が入る。
「その者は自分の力量を測り間違えていたのか?それとも、隊長のためなら喜んで死のう、と?」
元帥が、右手のひらをゼロロに向けた。
「アサシンから離れろ、赤き戦士よ。その者はもう助からん。」
「ならば何故離れる必要がある。トドメを刺すつもりなんだろう?」
挑戦的なギロロの目。元帥はフッと笑い、右腕をゆっくりと下ろした。
「よろしい。ならば…二人まとめて地獄に送ってやろう!」
右手でこぶしを作り、すばやくゼロロに向けて、こぶしを開く。同時に、ゼロロと共にギロロが後方に吹っ飛ばされた。
「!?ギロロさん!」
突然の出来事に、ギロロの真横に居たパルルが振り返る。
ギロロの方は左腕と背中を強打し、激しく咳き込みながら左手を押さえた。
その手が、さらに赤く染まる。
「赤き戦士よ、いまさら仲間を守って何があるのだ?その命を削ってまで瀕死の仲間を守るとは、何たる愚か者。いや…」
元帥の笑みが濃くなった。
「もう死んでいる仲間、か?」
元帥がもう一度、今度はパルルに向けてこぶしを開く。今の言葉に反応したパルルが、元帥に攻撃を仕掛けようとしたためだ。
「お主なら知っているだろう?ケロロ軍曹。『死神の大鎌』がどんな技か。愚かなお仲間に教えてやったらどうだ?」
ケロロの顔が、険しくなった。腕に抱かれているタママが、うっすらと目を開ける。
壁に叩きつけられた痛みに耐えながら、ギロロとパルルもケロロの方を向く。
「軍曹…さん?」
かすれた声で、タママが言った。
ケロロの口が、動いている。だが、言葉は発していない。明らかに動揺していた。
「言えぬのか、ケロロ軍曹。言えぬならば私から愚か者達に教え「死神の大鎌は、自滅用の技。窮地に陥り、助かる見込みが無い際に、周りの敵を巻き添えにして死ぬための技…であります。」
元帥の言葉を遮り、ケロロがしっかりした声で言った。
その声からも表情からも、何も感じることが出来ない。
「ご名答。だがケロロ軍曹、一つ、大事な情報を忘れていないか?」
元帥がわざとらしく、右手の人差し指を立てて笑う。
「この技を使って生き残ったものは、何億年という歴史の中にも、誰一人存在しない、と。」
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