時を操る男

□−拉致−
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強い眼差しでタムムを見据えるミリリ。

その目前で、ビームサーベルは止まっていた。

ケロロが溜まっていた息を吐く。

手元の地面が硬くなりはじめ、いつの間にか胸部まで埋まっていた身体を何とか引きずり出した。

自力では無理そうだったので、後ろで埋まっているクルルもついでに引っ張り出してやる。

「まったく…世話の焼ける部下でありますなぁっ。」

「うるせぇ…」

コンクリートの花に食われていたタママも、その花に吐き出され無事脱出。

花はタママを吐き出してすぐに、枯れて消えてしまった。

ギロロを捕らえていた腕が消える。微妙に変色した身体が、力の凄まじさを物語っていた。

「ナゼ…ナゼジャマヲスル、ミリリ!」

「こんな事をして何になるの。何も変わらない、これではあなた達は本当に…」

「ダマレ!」

怒鳴ると同時に、タムム自身から強風が生み出され土埃が沸き立った。

吹き飛ばされるまではいかないものの、立っているのがやっとだ。

タムムはもう一度、ギロロを睨んだ。

「ミリリ…キミハ、ダマサレテルンダ…」

奴に。奴等に。

くるり、とタムムが方向を変えた。

視線の先には、こちらに背を向けたケロロ。

「待て、タム…!」

ギロロが止めようと一歩踏み出した瞬間、もうタムムは彼の前にはいなかった。

「ったいちょ…」

「え…」

クルルの声と、腕を握る誰かの感触。

振り返れば、紅い瞳と視線がぶつかった。
タイムイリュージョン
「反転砂時計…!」

ケロロを襲う、ふわりと浮かぶような感覚。

最後に聞いたのは、自分の名を呼ぶ隊員達の声だった。





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