時を操る男

□第一章 −発動−
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漆黒の闇の中に、小さな光がほわんと浮かんだ。

吸い込まれそうな漆黒の中に弱々しく光るそれは、次第に力強く、大きくなってゆく。

めざメよ…イムム…

唐突に光が、そう呟いた。

まるでそれに答えるように、ほわんと、漆黒の中にもう一つ光が浮かび上がる。

光の呟きは続いた。弱々しく、だがだんだんと力強く。

けロンせいを…

ケロんぐんヲ…



“イマコソ、ワレラノメザメルトキ…――”













「やっばーい! もうこんな時間〜っ!!」

青く輝く空に、白い小鳥が羽ばたいた。

長女夏美が寝坊寝坊と叫びながら、慌しく階段を駆け下りてくる。

玄関では既に靴を右足だけ履いた長男冬樹が、左足も靴へ突っ込もうとした状態で姉に振り返っていた。

そんな冬樹に目もくれず、夏美はケロロの用意したトーストをくわえて再び玄関へ現れる。

「もう、起こひてよ、ふゆきっ。」

「あれ、夏美殿に冬樹殿、日曜日なのに学校でありますか?」

夏美の声が聞こえたのか、ゴム手袋をはめたケロロが、風呂場から玄関へぴこぴこと現れた。

「ひがうわよ、あたひは部活の助っ人。」

「僕はオカルト部の発表会があるんだ。じゃ、いってきまーす!」

いってらっしゃいであります、と手を振りながら、ケロロはバタンと閉じた玄関のドアに向って小さくため息をつく。

せっかく作った朝食、あの様子だと夏美はトースト以外手をつけてないだろう。

残ったサラダや目玉焼きは…

(…ギロロにでもやるか。)

それにしてもペコポンの学生は大変でありますな。せっかくの日曜日なのにあんなにドタバタしちゃってさ。


ケロロがリビングへ行くと、珍しくギロロが庭から現れていた。

呼んでもいないのに自分から入ってくるとは。…あぁ、もしかしたら夏美殿の声でも聞いて…

「どったのギロロ。何か用事?」

「夏美の声が聞こえたんでな。どこか出掛けたのか?」

「部活でありますよ。そーいや来週大会があるって言っていたでありますな。」

言いながら椅子に飛び乗って、テーブルの上を覗く。

残っていると思っていたサラダや目玉焼きは、キレイに無くなっていた。

ちゃんと食べたんだ。

椅子から飛び降り、風呂場へ向う。

今日は家事をさっさと片付けて、昨日冬樹殿と買いに行ったギャンを作るんだ。





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