ノントルマの軌跡
□そのにっ!
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「ふっゆきーっ!居るー?」
声がした。玄関の方からだ。
昼間だし、ドアには鍵をかけてない。誰か入ってきたに違いない。
しかもこの声は…
「なんだ、居るじゃない。返事くらいしてよねー。」
「ね、姉ちゃん!?」
テーブルに買い物袋を置きながら、オレの姉…夏美が、不満を漏らす。
姉ちゃんは、活発という単語のためにいるような人だ。
しかも、町を歩けば道行く男が思わず振り返るくらいの美人。
「眠そうね、冬樹。…もしかして徹夜してたの?」
「まぁ…ね。」
「あ、ごめん、来ちゃまずかった?」
姉ちゃんは、オレの家から少し遠い、山の麓にテントを張って住んでいる。
…なんでテントなんだ…家を建てるお金が無いようには見えないし…
まぁ、それは置いといて。
こうして会うのも久々だし…
寝るのはちょっと我慢するかな。
「別に構わないよ。」
「あ、そう?なら良いけど…」
「な、夏美…重い…」
玄関の方から、結構な数の紙袋を抱えた男が、よろよろと歩いてきた。
姉ちゃんのダンナ・ギロロ伍長だ。
…なんで妻にも偽名使ってんだろう…
「あー、ごめんギロロ。ありがとね。」
「お、おう…」
伍長は、赤い短髪に、軍服っぽい服を着ている。
左目に走る古傷、それに鋭い眼光の持ち主だが、その瞳が優しさを隠し持ってる事は、オレも知ってる。
オマケにすっごい武器マニアで、ビームライフルだのバズーカ砲だのミサイルだの、暇さえあれば武器を広げて磨いている。(銃刀法違反にならないんだろうか。)
まさに漢の中の漢、ハードボイルドである。
そしてこの二人が居ればあともう一人…
「おかーしゃーん!」
長い黒髪を、赤い、可愛らしいリボンでまとめた女の子・小雪ちゃん。
姉ちゃんと伍長の、待望の第一子、長女である。
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