頂文−2
□星に願いを
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すぅっ、と落ちた
流れ星一つ
貴方は
何を願う…?
-星に願いを-
「満天の星空、って感じですか…」
空を見上げ、八戒はふわりと笑みを零す。
「…だな」
連れて来て良かった、と内心そう思いながら
口には出さずに隣に立ち新たなタバコをくわえた。
今日7月7日は俗に言う七夕の日。
俺達が住んでいる街でも今日から連日で感謝祭が行われる。
一体誰に感謝すんだ、と毎年思いながらも
七夕祭を迎えるのはこれで何度目になるのだろうか。
この日が近付くにつれ、女達は慌ただしく動き出す。
七夕祭はカップルで…というのが女の中でのルールになってるらしい。
街に出る度に誰と行くのか、一緒に行こうと誘われまくり。
悪い気はしないけど俺はパス。
織り姫だか彦星だか知らないけど、俺にゃ関係ないし。
そんな訳で、今日は久しぶりに家でごろごろ。
人ごみが苦手な八戒も俺と一緒で一日家の中。
カードして、飯食って、風呂入って…
そして辺りが闇に包まれた今、俺は行動を起こした。
「なぁ、八戒。…ちょっと付き合ってくれね?」
連れ立って向かった小高い丘の上。
街から離れたそこは人もいない、音もしない異空間。
まるで俺達二人だけの世界のような錯覚さえして
少しだけ気分が高鳴った。
「どうして、また…?」
八戒はちらりと俺を見る。
何故急に此処に来たのか?という言葉を含めたそれを受け流し、俺はまた空を見上げる。
「星が綺麗だな〜なんて思って」
「貴方って意外とロマンチストなんですね」
ふふっと笑った声は風に乗り、俺の耳を擽(くすぐ)る。
「まぁ、七夕だし。いつもよりゴジョさんロマンチックなの」
茶化して言いながらタバコをふかす。
急に黙り込んだ八戒を見ると、空を見上げる翠が微かに濁っていた。
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