53−3

□沈黙の後で
1ページ/2ページ



「………………」
「………………」


今日も今日とて三蔵との2人部屋。
アイツはテーブルの上座に着いて新聞と睨めっこ。
俺はベッドに寝転んで雑誌と睨めっこ。
ぺらぺら紙の擦れる音がするだけで、時計の秒針でさえ黙りこくってじわじわ進む。


「………………」
「………………」


別に、会話なんかなくたって淋しかねーけど。
三蔵は物静かなヤツだし、最近宿で休んでる時ぁ大概こんな感じ。
俺は結構バカみたいに喋って大笑いすンのが楽で好きな方だし、さんぞー大好きだからずっとイチャコラしてたいンだけど。
まぁ付き合い出してからは見事に感化されちゃったー、みたいなトコあるし?
第一に、三蔵と俺、それぞれの時間を大切にするよーになった気もする。
ベッタリもいーけど、こンくらいの距離感あった方が俺らには丁度いーのかもな。


「………………」
「………………」


なんかこーしてっと、つくづく平和だなーとか思ったりするワケよ。
それってほんの一時的なモンなのは判ってンだ。
ジープに乗って発進すりゃあ……最悪こーしてのんびりしてる最中だって、いつ敵サンがお邪魔してくっか知んねーし。
ま、今日の所は来ませんよーにって思う。


「………………」
「………………」


だって。
だって……もーそろそろなんじゃね?
新聞の内容をテキトーに頭に突っ込んで、冷めたコーヒー啜って。
フッと一息ついたらつまんなそーな顔して。
自分の時間を堪能したら、今度は?


「………………。」
「…………おいで」


俺が何となく目を上げたら、ばっちり想像通りに目が合ったモンだから。
つい苦笑して雑誌を閉じた。

三蔵は物静かなヤツだし、自分の時間を大切にする。
俺のコトなんかすっかり忘れてンじゃねーの?ってくらい。
でもこーして毎度のよーに無言で訴えてくンだから。


「……何しよっか」


もぉ……可愛いったらないの。


END
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ