小説
□simple
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恋をしました。
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彼を想うと温かくなった。彼を願うと熱くなった。
心安らかでない日が続く。
(どうすれば楽になれる?)
気持ちを伝えれば良い。伝えたい。
だけど臆病だった。言う勇気が無かった。
「柳生」
自分を呼ぶ声。その声は甘くて。
「何でしょう?」
答える柳生の顔には笑み。
(仁王君が私を呼んだ…)
嬉しい。
苦しい。
些細な事にも喜びが生まれ、これ程までに切ない。
「ちょお打ち合いせん?」
仁王はボールを取り出すと柳生に向かって投げた。
「お相手させていただきます」
受け取ったボールを握り締め、柳生はコートへと進む。
(好き。仁王君が好き)
コートに響く澄んだラリーの音。
暫く二人の間を飛び交っていたボールは、ネットに掛かると地に落ちた。
愛しい人へ、手紙を書きましょう。
私は貴方が好きだから。
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