小説

□七三革命
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「七三眼鏡ー。七三ー。おーい」
 仁王の呼び掛けはおそらく自分に向けてのものだろうとは思っていた。
 けど、このような馬鹿にしたあだ名に反応したくはなくて、柳生はシカトを決め込む。
「…そこの七三眼鏡紳士!!」
「はい、紳士ですけど何でしょう?」
 柳生比呂士14歳、花も恥じらう紳士なお年頃。紳士と聞けばたとえ呼ばれてなくても振り返る。
 その習性を利用した仁王の作戦勝ち。
「お前さんのその髪型、いい加減ダサいから変えんしゃい」
「ダサいとかサラッと失礼な。世の七三に謝りたまえ」
 向かい合う二人の間に火花が散った。
 暫し見つめ合っていると互いの胸に淡いトキメキが生まれる。
 そう、目と目が合ったその日から、二人の恋が…。
「だいたいその髪型、名前で人を殺せるノート拾った青年と被りよるし」
 始まるわけでもない。
 柳生の額を人差し指で小突き、仁王はフッと嘲笑した。
 こういうわけで、柳生の髪型改革は幕を開けたのだ。
「これ着けてみんしゃい」
 柳生に差し出されたのはヅラ。どう見てもヅラ。頭に被るものであって、股間に着けるものではない。
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