□日常と非日常
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私は又性懲りもなく京極堂を訪ねていた…。
又もや京極堂に呼ばれたのだ。しかし訪ねてみると当の本人はいつもの如く世界の終りが来たかの様な仏頂面をして私が来たのに顔も上げずお構い無しで本を読んでいた

そこに『スパーン』という小気味良い音と共に
「何だ、収まる処に収まっているじゃないカ!!僕としてはあまり本意ではないが京極の奴は関の痴態を見たいらしい!!」

と快活に云い乍ら部屋に入って来たのは榎木津礼二郎その人だった。

「榎さん…部屋に入る位もう少し静かに出来ないのか…」
と云う京極堂の言葉は無視して榎木津は続ける。

「何だって好き好んで猿なんかを見なくちゃならないんだ!!僕は迚も不愉快だ。関君、君も何とか云ったらどうなんだ!!」

「何とかって…何を……?」

私はオロオロして少し困惑気味に尋ねる。

「何って自分が脚を広げて泣きながら悶えているンだ!何か云う事が有るだろう?嫌だとか、気持悪いからよせとか、………?いや、君、関君。…君、気持ち良かったのか?!真逆関…お前も…?!」

そう云い乍ら榎木津は目を細める。…私の記憶を視ているのか…?!

「な…何を云っているんだ榎さん。僕と京極堂は…そんな…」
私は火を吹いた様に赤くなる

「いや…大丈夫だよ関口君。榎さんに対して隠し通すことは難しい。榎さんは全て知っているよ」
そう云った家の主を私は見た。

「君だって榎さん相手に隠し通す事等出来るとは思わないだろう?!…特に君には絶対無理だ関口君。断言出来るよ」
京極堂は本から目を上げもせずにそんな事を云う。
私はなんとなく面白くない

「そんな事断言されても嬉しくないよ!!それより何だい榎さん。京極堂が…僕の事をその…好きだってずっと知っていたのかい?」私は顔を紅潮させて恐る恐る聞いてみる…

「僕に知らない事等無いんだ!!僕は探偵だ!!神だゾ!!全て知っているに決まっている!!そんな事も解らないのカ?!この愚か者め!!」

「………そうなのか…」

「猿の何が気に入ったのか僕には理解出来ないが、何の役にも立たない馬鹿猿でも一つだけ取り柄が有るぞ!!怯え方が凄くいいのだ!!まるで苛められる為に生まれてきた様なものだな関君」
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