□頑張れ鳥口君!!
1ページ/4ページ

「あぁ生き返る。矢張り温泉は気持ち良いな…」
関口は湯に浸り乍ら独り呟く
「おっ関口先生じゃないっすか。やっぱり温泉は良いっすねぇ」
そう云い乍ら近付いて来たのは関口の書いている小説が載るカストリ雑誌の記者で関口の事を先生と呼ぶ。最近は何かと事件に巻き込まれ気味で名を鳥口守彦という。この男黙っていればそれなりに二枚目に見える男なのだがヒョウキンな言動の所為でそうは見られない事が多い。
 そんな彼だが彼は関口へ密かに想いを寄せているらしい。だが関口への道は険しい。何故なら京極堂と榎木津を相手にしなければならないからである。この二人もライバルなのだ。そして何を隠そう関口本人が何も気付いていない事が一番の問題なのだった
「そうだね。君も入っていたのか、失礼するよ」
「いえいえ、先生と御一緒出来るなんて光栄っす!」
云い乍ら関口を眺めて顔を弛緩させる。そんな事知る由もなく関口は続ける
「そうかい?!…いやでも鳥口君若いなぁ。屈強そうだ。がっしりしてるし羨ましいよ。僕なんかもうクタビれてるし…」
「そ…そんな事ないっすよ!先生はまだ十分魅力的ですって!!」
「そんなに気を使ってくれなくても構わないよ。本当の事なのだから」
関口は云い乍ら苦笑する
「そんなぁ…本当に魅力的なんですよぅ」
鳥口は力説する。そんな鳥口に気圧され
「…そうかい?!じゃあまぁ…有難う…とでも云っておこうかな?!」
云い乍ら関口は照れたようだった
(うへえ先生可愛過ぎですよぅ…)
そんな事思われているとは毛ほども思っていない関口
「僕はもうこれで上がるよ。すぐに上せてしまう質でね…」
「あっじゃあ僕も御一緒します」
二人して湯から上がり浴衣に着替える
「温泉に浴衣。良いっすねぇ風情があって。似合ってますよ先生」
「そうかな?!鳥口君も似合っているよ。背もあるからね」
(うへえ先生…嬉しいっす)
鳥口が喜びを噛み締めていた正にその瞬間
「随分と楽しそうだねぇ?君達?特に鳥口君?」
そう云ってやって来たのは京極堂だ。鳥口は彼の事を師匠と呼ぶ。
その京極堂は凄まじく凶悪そうな顔で笑っている。…怖い。
「…京極堂?!何故君がここにいる?!」
「僕が温泉に浸るのがそんなにいけないのかい?!」
「いやそういう訳じゃないが…」
京極堂は片眉を吊り上げる
「それはそうと関口君。何だその頭は。君は子供か?!全く拭けていないじゃないか…僕が拭いてやろう。おいで」
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ