望月旋律

□貴方しかミエナイ
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 今でこそ丈夫になった銀時だが、その昔は、体が弱かったので、すぐに高い熱をだしてしまうほどだ。体が弱く、髪の色が銀色で皆と違う銀時は、よく虐めの対象になっていた。

 子供というのは残酷で、自分達と違うと言うだけで仲間ハズレにされたり、体が弱いと言うだけで邪魔者扱いをされてしまう。

 体の弱い銀時はやり返すことなどできず、まだ桂や高杉ともあっていなかったため、いつも幼稚園では一人だった。



 幼稚園の夏休み終わり頃、親に捨てられた銀時を育ててくれる吉田家の隣に、仕事の都合で土方家が越して来た。

 引越しの挨拶にやって来たのは美しい女性で、その隣には、これまた精巧な人形のように美しい少年がいる。

 銀時は養い親の松陽の後ろに隠れながら、その少年に見惚れていた。


「ヒジカタ、トウシロウです、ヨロシクおねがいします」

「しっかりしたお子様ですねぇ、ホラ、銀時さん」

 名前と共にしっかりと挨拶をするさまに優しく微笑みかけ、自分の後ろに隠れている銀時の肩をそっと押す。

「…ぁ……」

 松陽の手に押され前に出た銀時だったが、髪の色と体が弱いため友達がいないので何と話していいかわからないのと、目の前の少年に、他の者達同様嫌われたらどうすればいいのかわからず、口を開いても言葉は出てくる事なく、直ぐに俯いてしまう。

「…キレイな色」

 俯いていた銀時の耳に、そんな言葉が聞こえてくる。

「キラキラ光って、すっげーキレイ!」

 思わず顔をあげた銀時の目に飛び込んできたのは、綺麗な笑みをうかべる十四郎だった。

「オレ、トウシロウ。よろしくな?」

 視線を合わせ手を差し出してくる十四郎に驚き、オロオロと松陽と十四郎へと交互に目を向ける。松陽は、そんな養い子の心情がわかったのか、小さく苦笑して銀時に頷いてみせた。

「ょ…よろし…く…」

 そっと差し出される手を握り返すと、十四郎は綺麗に笑った。



 あれから、十四郎と銀時は急速に仲良くなり、毎日「ぎんちゃん」「トシちゃん」と呼び合って一緒に遊びまわっていた。

 体が弱く友達がいなかった銀時は、いつも一人で遊ぶか絵本を読むかしかしたことがなかったので、十四郎と一緒にする遊びは、どれもが珍しく。銀時にとって、十四郎との時間は飛ぶように過ぎていく。

 銀時よりも背が高くしっかりしている十四郎だったが、実は年は銀時と一つしか離れていない。そのため、幼稚園に通うにしても中途半端で、九月に入り、銀時が幼稚園へ行っている間は、一人で遊ぶしかなくなってしまった。



 年の近い友達と遊んだことがなかった銀時にとって、十四郎は初めてで唯一の友達だ。その彼と離れ離れにならなければならない幼稚園の時間が、銀時には苦痛でならなかった。

 しかし、幼稚園が終われば、十四郎と一緒に夕飯まで遊びまわることができる。それだけを思って、銀時は幼稚園へと通っていた。
 
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