望月旋律
□学園天獄
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後で知ったんだけど。
その人は、大学を卒業したばかりの新任教師で。名前は土方 十四郎と古風な名前をしているくせに、担当教科が英語っていう男。
そう!
男!
その人はどこからどう見ても男で。しかも、性格なんて、その秀麗な顔からは想像つかないほどの男前。
俺もさぁ、悩んだよ?
学校じゃぁ、ついつい無意識のうちに先生の姿を捜しちゃうし。
先生を見かければ見かけたで、心臓がありえないほどドキドキするし。
気がつけば、先生の事を考えちまうし。
夢に出てきた時なんか、朝、絶対人様に見せらんねぇ状態になってんしよぉ…。
あれ?何か俺、おかしくね?
おかしくね?
って、一週間は、大好物の甘味の量が半分になるほど、悩みまくったね。
いつもだったら、一日にパフェ四杯は軽いのに、一日二杯ってありえなくね?
ありえねぇだろ。
まあ、それほど、悩みまくったって事なんだけどよぉ。
でも、先生の事を知れば知るほど嬉しいし。
ウキウキするし。
それに何より、あんなに男前な性格のクセして、たまに見せるはにかんだ笑顔が、超綺麗なんだ。
そしたらよぉ、俺に向けられた笑顔じゃないってぇのに、顔は赤くなるし、ありえないほど鼓動は速くなるし。
あれ?これって恋じゃね?
もう、認めるしかないんじゃね?
諦めて、潔く認めるしかなくね?
認めるしかねぇだろぉぉがぁぁぁあああっ!?
そこからは、坂を転がり堕ちるが如く、先生にはまって。先生の一挙一動を見逃さないように、影から見守り続けた。
おい、コラそこ!
ストーカーとか言うんじゃねぇ!
コレはアレだ…ディープラブ?
そう、ディープラブ!
断じて、ストーカーなんかじゃねぇっ!
そこんとこ、間違えんなよっ!
とにかく、認めた当初はよぉ。ただ、見ているだけで良かったんだよ。
まあ、そりゃぁ俺だって、健全な男の子なわけだし?
思春期なセイ少年なわけだし?
イケナイ夢を見るぐらいは、許して欲しいわけよ。
ぶっちゃけ、朝、目が覚めれば、ヒトサマには絶対言えない、特に本人である先生には言えない状態であろうと、それを実行に起こすわけでもなし。
ただ、影から先生を見守ってるだけで。
そりゃぁ、先生に不埒な考えを持ってそうな輩には、制裁を加えたりはしたけど。
そんなの、可愛い恋心が起こす些細なことじゃね?
そう思うだろ?
とにかく、最初は見ているだけで幸せだったわけよ。
それが、見ているだけじゃ物足りなくなったのは、高校生活も最終学年になり、先生が俺の担任になった時からだ。