朔月秘話


□恋はある日突然に
1ページ/23ページ

 
 正午から降り始めた雨は止む気配をみせず。街を行く人々は誰もが無口で、周りを気にすることなく傘を片手に早足で進んでいく。

 神楽は一人白い仔犬を胸に抱き、誰の家かも知れない軒下で悔しそうに唇を噛み締め、雨がたたき付けられていく地面を睨み付けていた。



 まだ肌寒いこの季節、ザアザアと降り続ける雨は止む気配もなく。



―――春は、まだこない。
 
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ