朔月秘話
□恋はある日突然に
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正午から降り始めた雨は止む気配をみせず。街を行く人々は誰もが無口で、周りを気にすることなく傘を片手に早足で進んでいく。
神楽は一人白い仔犬を胸に抱き、誰の家かも知れない軒下で悔しそうに唇を噛み締め、雨がたたき付けられていく地面を睨み付けていた。
まだ肌寒いこの季節、ザアザアと降り続ける雨は止む気配もなく。
―――春は、まだこない。
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