望月旋律

□恋はある日突然に・番外編
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※こちらは、朔月秘話にて連載中の話の番外編になっております。ちょっとネタバレもございますので、ご注意を。




 段々と寒くなり、厚着が目立ってくる町の住人を尻目に、黒い制服を着た土方は、煙草をくわえながら一人町を見廻っていた。

 屯所をでた時は確かに二人だったが、土方が目を離した瞬間に、本日の相方である沖田は姿を消していたのだ。

 相方が沖田の時は、できるだけ気をつけているのだが、いつも気がつけば出し抜かれては、ため息をつくはめになる。

 普通に一人で歩いている土方だが、何気ない仕種で周囲を見渡しては、異常がないかどうかを確認して歩いている。

 規定のルートを巡回した土方は、少し先にある公園で一休みをしてから屯所へ戻る事に決め、少しだけ足を速めた。

 ここ最近、攘夷志士達のテロ行為が多発しており、副長である土方はなかなか休みを取ることもできず、半月ほど休みなしで働いている。

 真選組で唯一の女性隊士である土方は、屯所とは別に休息所を設けており、そこに出来るだけ帰るようにしているが、やり残してきた書類が気になったり、隊士達(主に、局長と一番隊隊長)の後始末が気になったりで、あまり休んだ気にはならず。なんだか、体が怠くて仕方がない。

 土方はため息をつくと、もうそろそろ、ストレス解消をしなくてはならないのかもしれないので、今度は何を作ろうかと考えた。

 生まれた時に十歳まで生きられないかもしれないと宣告され、強く生きられるように男名をつけられた土方だったが、子供の頃に、今は亡き母とよくお菓子作りをしていたことから、ストレスが溜まるとその衝動から、大量のお菓子を作り出してしまう癖がある。

 しかし、困った事に、作るのは好きだが食べるのは苦手なため、いつもその始末に困ってしまう。

 今までは、長持ちしないものは屯所へと持って行き、隊士達に配っていたが、屯所にいるのは土方を抜かせば、男のみ。例外はいるが、甘いモノを好んで大量に食べてくれる隊士は少なく、残りは、昔馴染みの幕吏数名に押し付けていたりした。

 しかし最近は、万事屋の神楽とひょんな事から仲良くなり、大量に作ったお菓子達がすぐになくなるようになった。今までは始末に困るので抑えていたのが、際限なく作れるとあって、材料の減りが激しいのだ。そのため、作りたいモノのリストを作って、材料の補充をしなければならない。

 土方は、頭の中で材料の残量を思い出していたが、視界のはじに見慣れた白い塊をみつけ、足を止めた。
 
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