短編
□次はお前に。
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4時限目のチャイムで目が覚めた。
どうやら俺は寝てたらしい。
寝起きの目には眩しすぎる蛍光灯の光が俺の視界を狭くした。
「おい、あべ!あーべ!」
ゆさゆさと体を揺すられ、意識がしっかりしてくる。
気がつくと、目の前にはメガネをかけた花井が立っていた。
「…おう。花井か」
「花井か、じゃねーよ。もうHRも終わっちまったぞ。
「ああ、うん。…俺、寝てた?」
「そりゃもう爆睡。つーか廊下で三橋が待ってんぞ。行くんじゃねーの?」
眠たい目を擦りながら廊下を見やると、三橋がなんとも言えない表情で俺の方を見つめている。
とりあえず帰り支度をしてから教室を出ると、ひんやりとした廊下の空気で眠気が一気に覚めた。
「わりー、待たせたな」
「だ、大丈夫だよ!」
大丈夫。そう言ってるくせに、廊下の寒さで頬が赤くなっているのは一目瞭然だった。
こいつはまた、大丈夫とか言いやがって…。後でお詫びにコンビニで肉まんでも奢ってやろう。
こうやって、俺がこいつの心配したり、気づかったりできるようになったってことは、少しは心に余裕ができたのかなー。なんて、最近特に思うようになった。
それと同時に、俺は三橋と居ると独り言が増えるってことも自覚してきた。
「そういや…、どこでやんの?」
「え?…あ、べくんの家じゃダメかな?」
「まあいいけど、俺ん家、お前ん家みたいに広くないよ?」
「ひ、広くなくても大丈夫!」
…それは遠まわしに俺の家が狭いって言いたいのか?
いや、三橋のことだ。きっと無自覚なんだろう。
「あ…そういや、俺だけでいいの?」
「…へ?」
「だから、花井とかいないじゃん。居なくてもいいわけ?」
「うん、花井君には明日教わるし、他の人にも、お願いしてあるから。栄口君とか」
そう言う三橋の顔は、なんだか焦っているように見えた。
三橋はそんなに数学ヤバいのか?聞こうとして止めた。聞かなくてもわかることだし。
「じゃあ行くか。あ、コンビニ寄ってこうぜ」
「う、うん!」
二人は並んで校門を出た。
*