短編

□次はお前に。
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はぁ…。
思わずこぼれたため息は、今の季節を物語るように周りの視界を白く曇らせた。

「だ、だめかな?」
「いや、勉強ぐらいいつでも教えてやれるけど…」

三橋が話しかけてきた理由は、今日の俺の予定を聞きたかったらしい。

でも、予定を聞くのに2、30分かかって、ようやく本題に入るってどういうことだよ…。

「じゃぁ…す、数学!教えてください!」
「おう。べつにいいよ」

やっと話の肝が見えたところで、時計に視線を送る。
そろそろ急がないと遅刻しそうな時間になっていた。

そんじゃ、放課後お前の教室行くからー…」
「俺が行く!」
「へ?」
「お、俺が教えてもらうから、俺が行く、よ」
「あ、まあどっちでもいいけど」
急に大声出すから何かと思った。

つーか「テストだから勉強教えて」って一言さえこんだけ時間かかるってどういうことだよ。
こいつの性格にも慣れたと思っていたけど、未だに本気で殴りたくなるんだよなー…。

阿部が必死に自分の怒りと戦っているのに対し、三橋は嬉しそうに阿部に笑いかけていた。

「じゃあ、また放課後、ね」
「じゃーな」

ちょうど話が終わったところで、チャイムが鳴る。

三橋は時計を見ていなかったのか、慌てて走って行った。
俺も遅刻はしたくない。
とりあえず走ることにしよう。




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