短編
□次はお前に。
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「ありがとーございましたっ!」
「したっ!」
いつもの野球部の挨拶がグラウンドに響いた。
もうすっかり太陽が上りきっている。
レガースやマスクなんかの道具を音を立てながらも手際よく片付け、制服に着替えるために部室に向かっていた時だった。
「あ、あべく…ん!」
今まで俺を避けまくってたアイツが、やっと俺に声をかけてきた。
なんだ、やっと話す気になったのか。
いろいろ思うことはあったが、まあ、そんなことはどうでもいい。
「何?」
少しの間をおいて返した返事は、思ったより不機嫌オーラが出てたらしい。
振り返った三橋の瞳には、大粒の涙が溜まっていて、今にもこぼれ落ちそうだった。
「おい、いきなり泣くんじゃねぇよ!」
「で、も…阿部君、おこっ…」
「別に怒ってねぇから!」
「ひっ!」
あんなに変だと思っていた三橋は、いつに間にかいつものウジウジした三橋に戻っていた。
*