短編

□5pの距離
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「ポッキーゲームしない?」

ある晴れた冬の日。練習後の部室の片付けをしている迅にニコニコしながら言ってみた。

床をせっせと掃いていた迅は、びっくりしたのかなんなのか、口をパクパクさせながら手にしていた箒をその場に落とした。
部室に大きな音が響いて、耳がキーンとした。

「…慎吾さん何言ってるんですか?」
「だーかーら、ポッキーゲームしようって言ってんの」

もう一度はっきり言うと、今度は迅の顔がみるみるうちに真っ赤に染まっていった。

「ぽ、ポッキーゲームって、あの、両端をお互いに食べていって…キ、キスするあれですか?」
「真柴君はそれ以外のポッキーゲームをなにか知ってるのかな?」

俺の顔を見つめながら目をぱちくりしている迅。自分が箒を落としたことも気がついてないらしい。

俺も「なんでも顔に出しちゃって…可愛いなぁ」なんて、うっとり迅を見つめながら、おもむろにコンビニ袋を取り出す。
中から赤いポッキーの箱を出して迅の前に置いてみた。

迅の反応は予想通り。
「やっぱり準備してる…」って顔をして、俺を見ている。迅の顔には、半ば諦めの色も見える。

ただ、火照った顔はそのままだ。

そんな迅がすごく可愛かった。



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