過去拍手御礼小説

□不器用な愛情表現
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「不器用な愛情表現」







酷くイライラする・・・






嫌でも耳に入ってくる背後からの松田と楽しそうに会話する彼女の声





「うわぁ〜、このケ−キ手作りですか?すごく美味しそうですっ」


「本当ですか?ありがとうございます、松田さん」





ケ−キを切りわける彼女の隣でヘラヘラする松田の姿が見なくてもわかる





「松田さん、ここは捜査本部です、不適切な発言は控えて下さい」


振り向いて言い放った



「そ、そんな…僕はただっ」


続きを言いたそうな松田をギロリと睨んで言葉を制止させる


「り、竜崎……」



振り向いた為に必然的に彼女とも目が合う





私は何も言わずに目を逸らし、体を元に戻した



皆の呆れたため息や、何やらブツブツ小言を言っている松田の声を背中に感じながらパソコンの画面を見ているフリをして、昨夜の事を思い出す










ベットの上で・・・



私の腕の中で、私が教えた通りに反応する貴女の姿



私の過剰な独占欲を無条件に受け入れ、満たしてくれる貴女の姿





私は画面から目を離し、俯いて小さくため息をついた





理不尽な発言は私のほうだ


貴女が愛してくれているのはわかっているのに…




自分の中の強い支配欲が抑えられない












「わがまま竜崎さんっ・・・メリークリスマス!」


「っっ…!!」



突然耳元で囁かれた声に思わず体が揺れる




振り向くと愛らしい笑顔の彼女が立っていて、私に小さな紙袋をそっと差し出した



「あ…の……」


「竜崎にクリスマスプレゼントだよ?」


そう言って隣に座り、早く開けろと言わんばかりに視線を送ってくる




私は少し困惑しながら中心を止めてあるセロテープを剥がし、中身を上から覗き込んだ











「……嫌がらせ…ですか?」



プレゼントの中身はどこかのブランドの男物の靴下…



私は唇を尖らせて彼女を見つめた



「あはっっ…やっと表情が崩れたっ」



「……はい?」


彼女の言葉に更に困惑して、笑い続ける彼女の顔を覗き込んだ




「くすっ……っだって竜崎、捜査本部にいる時、獲物を狙う狼みたいな顔してるんだもん…
変なヤキモチ妬いたりして…」


最後の言葉だけ小声で呟き頬を赤らめる貴女を見て途端に恥ずかしさが込み上げ、私は前を向いて顔を隠すように俯いた



そんな私を横目にまだくすくすと笑いながら貴女は二人分のケ−キを取りに席を立った













『ワ ガ マ マ リュ ウ ザ キ サ ン』



ついさっき耳元で囁かれた言葉を思い出し、声をたてずに笑った







わがままどころか・・・



どうしようもなく貧欲ですよ







貴女が楽しいのも幸せなのも、辛いのも苦しいのも



その全ての理由が私であって欲しい







私がこんな風に思っていると知ったら貴女はどんな顔をするでしょうか…










「美味しい?」


「はい…とても美味しいです」





嬉しそうに微笑む貴女はきっとわかっているんでしょうね






これが不器用な私の愛情表現だと・・・








今夜も嫌いな靴下を私に履かせたりして笑い合い、じゃれあって、幸せな時間をくれるのでしょう










「Merry Christmas…」





皆には見えない角度で小さな手を握りしめた












END

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