その他いろいろ

□どこにおちてるかわからない
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別に用事なんてないし

寝れるだけ寝てやった至極の日曜日。

さすがの空腹に目を覚まして冷蔵庫を開けても何も無く、

むくんだ顔でコンビニへと向かう。



駅前のコンビニのせいか、いつ行っても

まばらに人がいる

二つのレジの手前で並んでいると

空いたレジに「どうぞ」と呼ばれ

行こうと思う前にうしろにいた作業服のおじさんに抜かされてしまう



…いやいや、こんなことでおこるなあたし

おじさんはいまからお仕事なのよ

それにくらべてあたしなんかせっかくの日曜日になんもない田舎もんの女子大生よ




「おねーさん」



うしろから呼ばれてはっとする



「え?」


「レジ、空きましたで」


「え、あ。すみません」


「あ、まだお買いもん中やった?」



なんだかそういわれると何故だか「違います」とレジに行けなくなってしまい



会釈だけしてそばにあったスイーツを見る


もーいーや、どうせ夜にまた来るし

夜の分も買っちゃお


そう思い、もう一度店内を回ろうとすると





「いまから朝めしなん?」




さっきのお兄さんに声を掛けられた


(まだいたんだ)



「あ、ええ、ちょっと寝すぎちゃって」



(うわ、超はずかしい)



「あは、俺も俺も」


「はあ」


「寝すぎた日ってもー一日だるーなるって分かってるのに寝てまうんやなあ」




けたけたと笑いながら高身長の彼はしゃべり続ける



関西弁まじりの話を聞きながら

足先からあがるように見て観察していると




「あれ?」


「へ?」


「あの、レジ並んで」


「ああ、せや」


「お買い物したものは?」



彼は、あきらかに何も持っていない

そう聞くとその男はあー、とかえー、とかいって困ったような笑いをした



「お財布忘れた?」


「いや、ちゃうねん」


ますますわからない。




「そこの大学の商学部の子やろ?」


「え、そうだけど」


「ボクもやねん」





きらきらと一生懸命自身を指差してアピールしてくる


困った。知らなかった

いやしかし、あんなに人がいるのだ

一人を特定することなんてなかなかだ

…じゃあなぜ彼はあたしを知っているんだろう


すっぴんのルームウェアのあたしを。




「へえ、そうなんだ」


「せやねん!」



しかし謎は解けない。

ハテナの顔を崩さないあたしを見て

いままではきはきしていた声を急に小さくして




「えっと、だからですね、えっと」


「?」


「まー、なんちゅうか見た顔やわー思って、いや違うな」


「うん?」


「お友達に、なりたいなって前からおもっとったんですわ」


「…え?」


「大阪から上京してます土屋いいます」


「あ、はじめまして」


「今から朝めし行きません?」


「え、…へ?!」


「あかんかった?」


「いやだって、すっぴんだし寝起きだし」


「すっぴんもめっちゃかわええよ」


「!!」




いやいや待って、よくみたらかっこいい人と

あたし寝ぐせの髪でどこに行くのよ


とか思いながら、

ながながと持っていたおにぎりをやっぱ買いませんっていったら怒られるかな。

その時は外で一緒に食べるのもありかな


なんて、色々考えてた。





どこにおちてるかわからない


(どこで恋におちるかなんて分からないから、油断は禁物なのよ)

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