短文
□discord
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「おはよう魅上。」
「かっ、神!?」
魅上はうすぼんやりと開けた瞳に月の姿を確認し、慌てて飛び起きた。
3時間程睡眠を取り少し回復したのだろう、頭の回転が早い彼のこと、一瞬にして三日前から今までの出来事を思い出した。
「神…、申し訳…、」
再び今朝のやりとりを繰り返そうとする魅上の言葉を遮り、美しい微笑を作ってみせながら月が言う。
「もう昼食になってしまうけど…食事を作ったから食べよう。」
「えっ…」
あまりに普通の様子で、否…そこには優しささえ感じられる程柔らかに言われ、魅上は間抜けな声を出してしまった。
月が激怒して、自分は殺されるか重い懲罰を受けるのだと覚悟していたのに。
「起き上がれる?」
状況が飲み込めず慌てる魅上の背中にそっと手を回し、月は優しく抱き起こした。
今この状況には、普段通りの主従関係さえ感じられない。
月が主で、魅上が従。魅上はそれを不満に思ったことは一度もないし、むしろ悦びさえ感じていた。
月と直接逢って関わりを持つうちに、魅上の信仰心は更に増していった。
キラ…神としてはもちろんのこと、年下でありながら自分より優秀な頭脳にその立ち振る舞い、更には声、美しい顔立ちに至るまで、魅上は月の全てを心から尊敬し、愛していた。
月に従うのは当然、月以外から受ければ苦痛でしかない行為の全ても、月が自分に対して行うことは全て快感となり、深い悦びを感じた。
自分が月から愛されるような事はまず無いと思っていたし、恐れ多過ぎて願ってみたことすら無かったのだ。
「…魅上、ぼうっとして。どうしたの」
…どうしたの、と言われても。
月の態度はまるで家族や恋人にでも接しているかのようだ。
「い…いえ……、ありがとうございます」
魅上は信じられない思いだったが、月に支えられながら起き上がり、月についてリビングへと向かった。