短文
□discord
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魅上の消息不明がニアの仕業であることはすぐに解り、月はすっかり油断していた自分を憎んだ。
魅上は情報を漏らすことはしない。ここ数ヶ月、魅上を支配下に置いたことで確信していた。情報を漏らすくらいなら自殺を選ぶだろう。
…だが自白剤を投与されたら?ニアが相手では可能性は無限にある為、腕時計に仕込んだノートを使うことも考えた。が、それではニアの思うつぼではないか。
こうして悩んでいた矢先、明け方になって先刻の電話があった。普段なら二代目Lとして答えていたがそれももう、この状況では無意味だ。
今日ミサは居ない。撮影が日帰りできない為だが、寂しがるミサと反対に、月は静かに過ごせることが心地良かった。…普段通りなら、である。
(ニア…どこまでも憎らしい……それに)
易々とニアに捕まった魅上のことも、腹立たしく感じた。
今までも、嗜虐心にそそられるままに暴力を振るったり、嗜虐的なプレイを好んで行った。
だが今までは魅上が何をした訳でもなく、月も怒りの上からの行為ではなかった。
…しかし今回は。
(僕は魅上を…買いかぶり過ぎていたのかもしれないな)
月は玄関に向かいながら思った。
月は死神そのものであり
死神の目を借りた魅上は、只の哀れな人間である。